「征くん、お誕生日おめでとう」

はにかむように微笑む七海に、赤司も笑顔を返した。

「ありがとう」

七海の部屋の中は適度な室温になっていて暖かい。
脱いだ上着は七海がハンガーに掛けてくれたので、赤司は身軽な恰好でローソファに座っている。
下に敷かれたラグも、彼女が話していた通り気持ち良さそうだ。

「いまお茶淹れて来るからちょっと待っててね」

「ああ」

七海が部屋を出て行くと、赤司は先ほど彼女から貰ったプレゼントに手を触れた。
今年はタオルとシャツのセットだと言っていた。
形に残る物だとお互い大事にとっておくことになるので、いっそ消耗品のような物にしようと小学生の時に二人で決めたのだ。

今年の誕生日には赤司は七海に手触りの良い布製の清楚なリボンを贈った。
だから七海は髪を後ろでまとめて束ねる時にはそのリボンを使っている。
それを見るたびに赤司が密かな独占欲を満足させているとも知らずに。

ハンカチも靴も。洋服も。
少しずつ赤司から贈られた物で七海のクローゼットが埋まっていくのを、赤司はひっそりと楽しんでいた。

──それにしても、お茶を淹れるだけにしては少し遅すぎる気がする。
決して手際が悪いわけではないはずだ。

赤司は立ち上がって部屋を出た。


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