噂を聞いて、もしかすると…と思った七海は第4体育館へ行ってみた。 噂通り、灯かりがついた体育館に響く、バッシュの音とボールをドリブルする音。 そこには思った通りの相手がいた。 「黒子くん」 「七瀬さん?」 ボールを止めた黒子が驚いたような表情で七海を見た。 「黒子くん、ずっとここで一人で居残り練習してるの?」 「はい」 他の三軍の人は?と聞く必要はなかった。 一軍が居残り練習をしているのに、三軍は通常練習を終えたら帰ってしまう。 つまりはそういう事だ。 彼だけがまだ諦めてはいなかった。 そのことが何だか嬉しくて、七海は「頑張ってるんだね」と黒子に笑いかけた。 「それしか出来ませんから」 「それが出来ることが大事なんだよ」 黒子からは、やれる事は全部やろうという意気込みを感じる。 でも、他の三軍のメンバーはどうだっただろうかと思い出そうとすると、どうにも覇気や意欲が黒子には及ばない気がするのだ。 彼は本当に一生懸命バスケに取り組んでいた。 「邪魔にならないようにするから、また見に来てもいい?」 「もちろんです。僕も七瀬さんが来てくれたらやる気が増します」 それは珍しい黒子の笑顔だった。 |