とりあえず、今日一日だけで詰め込めるだけ詰め込んでみたが、それらがすぐに出来るようになるとは七海も思っていない。

「まずは基本の仕事を覚える事が大前提だから、やるべき仕事の内容をしっかりリストアップして、その上で項目別にコツや注意事項を書いていくこと」

もういっぱいいっぱいな顔をしている一年生に七海は優しく言った。
第一体育館から戻って来てから明らかに一年生の様子が変わっている。
彼らの気迫に気圧されてしまったようだ。

「最初は先輩や私達が指示を出すから、言われた事をミスせずに出来るようにすることを目標にして」

「は、はい」

「慣れて来たら、自分で状況を見て必要だなと思う事をやっていけるようにね」

そうまとめてから、今まで教えた事でわからなかったことはないか質問を受け付けた。

聞かれた事に答え、一年生がまたそれをメモに書き加えて、というやり取りを何回か繰り返したところで、大分緊張がとれてきたらしい一年生が、「はい」と手を挙げた。

「あの、今年から黄瀬くんが入部したって聞いたんですけど、ほんとですか?」

「黄瀬くん?」

「はい、モデルの、黄瀬涼太くんです」

質問をしてきた女子はちょっと頬を赤くしていた。
他の一年生も興味津々といった様子で聞いている。

「私はまだ見てないなぁ。ごめんね。でも、もし入部したなら、今はランク分けを兼ねた入部テストを受けてるとこだと思う。一年生や途中入部する人は必ずそのテストを受けることになってるから」

七海は去年の事を思い出しながら説明した。

「そのテストの結果でランク分けがされて、入部が完了するから、リストが回って来たら確認しておくね」

「はい、ありがとうございます!」

黄瀬が入部したかもしれないと聞いて、一年生達は一気に浮足だっているようだった。
七海も同じ学年だから噂は聞いているが、入ったばかりの一年生まで知っているとなると、本当に凄い人気者らしい。

今度は片付けについての指導をしながら、七海は後で赤司に確認しようと思った。



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