「あーあ…やっちゃった…」 七海は水道で指を冷やしていた。 湯を沸かしたポットでうっかり指を火傷してしまったのだ。 と言っても、水ぶくれが出来るほどではない。 見た感じ、ただ赤くなっているだけだ。 だが、目敏い赤司には絶対バレてしまうと思い、少しでも赤みを引かせてから戻ろうと思って冷やしているのだった。 室内だから暖かいとは言え、流水にさらしていた手はあっという間に氷のように冷たくなった。 火傷した部位を冷やすという目的には丁度良いのかもしれないが、こう冷たいと指先がかじかんでしまいそうだ。 水道を止め、痛いくらいに冷えた指をタオルで拭いて火傷の具合を確認していると、赤司がキッチンに入ってきた。 遅いから様子を見に来たのだろう。 七海の様子を見てすぐに状況を察したらしい赤司が七海の手を取る。 「赤くなってる。火傷したんだね」 「うん、一応すぐに水で冷やしたから水ぶくれになるほど酷くはないと思うけど…」 「大丈夫?痛むかい?」 「ううん。へい…き」 言いかけて七海は固まった。 赤司が火傷した指を咥えてしまったからだ。 ただ咥えただけじゃない。 ねろりと生暖かい舌が指を何度も舐めるたび、ピリピリとした感覚が走った。 指を切った時に舐めるというのは聞いた事があるけど、火傷をした時も舐めるものなんだろうか? 七海は混乱した頭で考えた。 「せ、征くん……も、もう、いいから…」 「うん?」 赤司はようやく指を解放してくれた。 その手で水道を捻り、舐めて愛撫した指をさっと水洗いしてくれる。 七海はそれまで少しも動けずにいた。 「気をつけないとダメだよ」 「う、うん」 お前の身体は指一本にいたるまで俺のものなのだから。 心の中でそう続けて、赤司は表面では優しげな笑顔を作ってみせる。 「お茶はこれかな」 「うん、もう丁度いいと思う。ケーキもあるの」 「冷蔵庫だね。一緒に持って行こう」 二人でそれぞれお茶とケーキをトレイに乗せて部屋に戻り、ささやかな誕生日パーティーを開いた。 その間、痛みではない痺れで、七海の指はずっとじんじん痺れていた。 |