「別に大したことは言ってないよ」

試合の帰り道、黒子に何を言ったのか赤司に尋ねてみると、彼はそう答えた。
連戦後なのでさすが疲労の色が見えるが、足取りはしっかりしている。

「だが、これで彼もコーチに認められたことだろう。レギュラー入りはまだ先になるが、正式に一軍入りしたも同然だ」

「そっか…良かった…」

七海は改めて赤司に微笑みかけた。

「今日は本当にお疲れ様」

「ああ、お前もかなり気疲れしただろう」

「心配な子が二人もいるとね」

「黒子と……誰だ?」

「もちろん征くんだよ」

七海は誇らしげに答えた。

「ずっと見つめ続けるって結構大変なんだから」

赤司は「そうか」と笑った。
それからまた表情を引き締める。

「1年生全体の課題としてはスタミナ強化だな」

「連戦で辛そうだったもんね。疲れで動きが悪くなってたのが私にも分かったくらいだから。それでも皆凄かったと思うよ。とりあえず普通の中学生ではあり得ないくらいに強いんじゃないかな」

「それでもまだ足りないな」

「征くんは欲張りだね」

「コーチや監督も同じ意見のはずだ。改善すべき点がある内はまだまだだよ」

七海は百戦百勝の理念が彼らの肩に重くのしかかっている図を想像した。
ただ勝つだけではダメなのだ。
帝光のスタメンでいる限りは、最大限の力を発揮した上での完全な勝利でなければならない。

「だったら、征くんはいつ休めるの?」

「お前の部屋のラグで一緒に昼寝をする時じゃないかな」

赤司は笑って七海の手を取った。



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