そして午後。
ズル休みしようとしていた灰崎は、偶然にも二軍の部員にゲーセンで目撃されてしまい、フルボッコにされた状態で主将に引き摺られてきた。
しかも、殆ど虫の息のだったにも関わらず、ユニフォームを着せられ、容赦なくスタメンに組み込まれた。

心配されていた黒子は後半から投入されることとなった。
まだ希望は失われていないということだ。
七海は少し安心した。
だが、これが本当に最後のチャンスなのは間違いない。

そして前半終了。
いよいよ後半となり、黒子がコートに入っていった。

「黒子くん…」

赤司が黒子に近づいていき、何か話している。
次の瞬間、七海には黒子の雰囲気が変わったように感じられた。

(…なんだろう…今の……征くんは何を言ったの…?)

それからの黒子はまるで別人のようだった。
次々とパスが決まり、受け取った青峰や緑間によって順調に得点が加算されていく。
それは黒子の“特性”が機能し始めた証拠だった。
コーチが黒子を見る目も明らかに変わっている。

七海は預かり知らぬことだったが、この日、誰かが言った「帝光には幻の6人目がいる」という言葉が、後に帝光にまつわる奇妙な噂となして囁かれることになったのだった。



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