安藤家の裏山にある小さな神社の境内は、異世界の戦国時代に繋がっている。
#nanasi#いわく、『戦国どこでもドア』だ。
彼らは皆そこからこの家を訪れている戦国武将や忍だった。

なまえが初めてその『戦国どこでもドア』の存在を知ったのは、高校に入学してすぐの事だった。
なまえがこの家に住み始めるずっと前、彼女の親戚であり元々の家主だった天音がある日突然失踪したために、一番近い身内であったなまえの親が警察や弁護士と話しあっていた最中の事である。

受験勉強に追われていたせいで暫く訪れていなかったが、なまえは小さい頃から安藤家の本家であるこの家によく遊びに来ていた。
懐かしい日々と天音の想い出に浸ろうと、無人になっていた家の片付けにやって来たなまえが見たのは、縁側に座って近所の医院の老医師と談笑している天音の姿だった。
その傍らには、赤ちゃんを抱いた知らない美人のお兄さんがいた。

混乱するなまえに、天音と半兵衛と名乗った男性が色々と事情を説明してくれた。
実際に神社の境内に行って、どこでもドアも実演してくれた。

天音が住んでいた頃は、そのどこでもドアはいつどうやって繋がるかわからないとても不安定な状態だったらしい。
半兵衛がこちらへ来たのも偶然入口が開いたためで、向こうへ帰った時に入口が開いたのもある日突然だったのだそうだ。
しかも、向こうの世界とこちらの世界の間には、次元の狭間とも呼ぶべき異次元空間があり、一度そこを経由するせいで移動の際には時差が生じるのだとか。
技術担当の元親と天才頭脳組が試行錯誤を重ねた上でその辺を調整して、ほぼタイムラグも無く自由に行き来出来るようにしたのだということだった。

そのお陰で、今はなまえが家に帰ると、天音だけではなく誰かしら武将が来ていて居間などで寛いでいる。
彼らにとってこの家は第二の我が家なのだ。

ある日は安芸の智将が勝手に蔵を開けて持ち出した蔵書を縁側で読んでいたり、またある日は奥州筆頭がキッチンで新作料理を作っていたり、またある日は大漁旗を持ち込んだ元親とその子分達が宴会をしていたり。
この前は、竜の右目がうっとりした顔つきで実った野菜を眺めている傍らで、なまえは伝説の忍に護身術を教えて貰った。

毎日がそんなカオスな状況だ。



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