ソファに座ってテレビを見ていたら、湯上がり美人といった風情の兄がリビングに入って来た。
白いシルクのパジャマの質感も相まって、ひどく涼しげに見える。

「バラエティものを見ているなんて珍しいね」

「うん、今日は特別」

放送する時間帯の問題もあり、普段こういったクイズ番組は全くと言って良いほど見ないのだが、今夜は好きな女性タレントが回答者として出ているため見ているのだ。

半兵衛は「へぇ」と呟いて天音の隣に座った。
ぴったりくっつくのでもなく、離れ過ぎない微妙な距離。
それは二人の距離に似ている。

隣から香るシャンプーの甘い香りにちょっとドギマギしていると、「ラストクエスチョン!」と司会者が叫んで、緊迫感のあるBGMがかかった。

「次の4つの中で、日本の法律で結婚が可能な関係はどれでしょう!」

司会者の言葉とともに画面に4つの四角い枠が現れた。
回答者に提示された答えの候補は4つ。

1:叔父と姪
2:元義父と元息子嫁
3:祖父と孫
4:両親の再婚で兄弟になった兄と妹


「4番だ」

絶対の確信を持って発せられた兄の穏やかな美声に、思わずびくりと肩を揺らしてしまう。
それは、天音と半兵衛の関係と同じだったから。

テレビの中では、回答者は2番を選んで不正解になってしまっていた。
正解はもちろん4番。

「だから何度も言っているだろう」

兄はもうテレビを見ていなかった。
その葡萄色の双眸は真っ直ぐ天音へと向けられている。

半兵衛は天音の横に片手をついただけで簡単に彼女の動きを封じてしまった。

「お兄ちゃん…」

「半兵衛、だ。天音」

優しく訂正されて、甘い微笑を湛えた唇が天音のそれにそっと触れる。
触れて、鳥がついばむように軽く食まれ、それから最初よりも深くぴったりと重ねられる。
天音はその間身動きひとつ出来ずにいた。
縛られているわけでもないのに。

あんまり優しくて甘やかだから、抵抗するのさえ忘れていたけれど、ダメだ。これはダメだ。

だって兄妹なのに。

でも、そう言うと、「血は繋がっていないよ。法律上も問題ない」と断言されてしまうのだ。
悪戯っぽく笑ってはいるけれど、その瞳の中に本気を感じとって、天音はどうしてもそこで立ち止まってしまう。
これ以上先に進んでしまうのが怖くて。

「こ、こんな…っ」

「こういうキスは初めてかい?」

「こういうのも何も、これが初めてだったのに…!」

「そうか…僕が君の最初の男か」

「お兄ちゃんのえっち!!」


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