「さっきも言ったけど…竹中の旦那の気持ち、俺様にはちょっと解る気がするよ」 机に頬杖をついて天音を見る佐助の顔は、いつもふざけて軽い男を演じている時と違って、ほんの少し大人びて見えた。 「ずっと一緒に育った幼なじみってさ、特別な存在だからこそ、そこから異性としての関係に発展させんのが難しいっていうか……結構露骨にアプローチしてもなかなか意識して貰えないものなんだよねえ」 言いながら、チラッとかすがを見る。 佐助の視線を受けたかすがは綺麗な眉をひそめた。 「それは単にお前が相手にされていないだけではないのか?」 「泣くよ!?」 確かにこれだけ言われて自分の事だと気づいて貰えないのは気の毒だ。 天音は佐助に少し同情した。 ただ、佐助の場合は、単に幼なじみだから意識して貰えないのではなく、かすがは上杉先生一筋だから眼中にないんじゃ…とも思ったのも確かだ。 佐助が気を取り直してこほんと咳払いをした。 「だからさ、突然でびっくりしたのはわかるけど、逃げないでちゃんと向き合って欲しいなあ、なんて」 「……うん」 「俺様もかすがも、いつでも相談に乗るからさ」 「何故お前が頭数に入っているのか分からないが、天音の力になろうという考えには同意する。私でよければ何でも相談してくれ、天音」 「うん、有難う」 「気にするな。私達は友だろう」 友人への感謝の気持ちが胸に溢れるのを感じながら礼を告げた天音の耳に、ガラッと教室のドアを開ける音が聞こえてきた。 |