豊臣グループと言えば、『外資系に負けない強い企業作り』を掲げ、着々と勢力を拡大しつつある大会社だ。 その影響力は日本全国に及ぶと言われている。 社長は豊臣秀吉。 綺麗で若い奥さんがいる。 社員達は親しみをこめて影で『ひでおし社長』と呼んでいたりもする。 また、ガタイが良く、小山のような立派な体躯の持ち主で容貌がゴリラに似ているため、バナナネタが飛び交うこともある。 副社長は竹中半兵衛。 恐ろしく頭脳明晰で相当なキレ者だと評判だ。 豊臣社長とは学生時代からの友人らしい。 女性と見紛う美貌の持ち主で、本人もそれを気にしているのか、それとも表情を読み取り難くさせるためか、大抵眼鏡をかけている。 あまりにも美しいので、そっちの気がある取引先の社長から暗に枕接待を要求され、激怒して徹底的に破滅させたらしいという噂さえあった。 ちなみにその会社は既に消滅しており、社長本人も消息不明であるため、真相は闇の中だ。 彼のことを社員達は恐れと敬意をこめて影で『女王様』と呼んでいる。 そんな副社長と初めて言葉を交わしたのは、通勤途中にある喫茶店でのことだった。 そこはお気に入りの店で、紅茶がとても美味しい私の癒しスポットだ。 朝早めに家を出て出勤前に寄ったり、帰りにたっぷり時間をかけて飲んで寛いでから帰宅したりしていたのだが、どうやら副社長もそこがお気に入りのようで、優雅にカップを傾けている姿を見かけることが度々あった。 その日は副社長が先に来ていたのだが、どうも様子がおかしい。 急に激しく咳き込み初めたかと思うと、ガタンと派手な音を立てて椅子から床に崩れ落ちてしまった。 ぱたぱたと床に滴り落ちた鮮血を見て誰かが悲鳴をあげる。 慌てて駆け寄った私は 「僕には無駄な時間などないんだ」などと訳のわからない事を言って抵抗する副社長を強引に救急車に放りこみ、病院送りにしたのだった。 検査の結果、肺を患っていることが判明したため、副社長はそのまま入院。 私は何故か社長命令で病院にお粥を差し入れさせられることになった。 |