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死神に追いかけられる夢を見た。

右手に巨大なナイフ、左手に巨大なフォークを持ち、下は灰色の袴を履いているけれども上半身は何故か裸で、素肌の上に赤と緑のクリスマスカラーのリボンを巻き付けた死神に、何処までも何処までも執拗に追いかけられる夢だ。
もうダメだ、食べられる…!という寸前で目が覚めた。




「眠そうですね、なまえ」

光秀が言った。
蛍光灯の光と窓から入る陽光で、彼が纏う白衣が白く輝いて見える。

「うん…変な夢見たせいか、朝からだるくて…」

「少し眠っていきますか」

「大丈夫。もう授業午前中だけだし」

グーに握った手で眠い目を擦ると、目が腫れるからやめなさいと光秀に手首をやんわり掴まれて顔から離された。
保健室の中はちょうど良い室温に保たれているせいか、眠気が加速してしまうようだ。
光秀は毎日殆ど一日中ここにいてよく眠くならないなと感心した。

「早く冬休みにならないかなあ」

「終業式はクリスマスイブでしたね。あっという間ですよ」

あと少しで冬休み。
学校はもう午前中授業になっていて、期末テストが終わった解放感から生徒達はみんな浮き足だっているように見えた。
進路の事があるから大変な人は大変な時期だけど、お休みが嬉しいのは確かだ。
私はお布団が恋しい。
冬休みは絶対寝倒そう。

「イブと言えば、夜は空いていますか」

「夜…?」

眠ってはダメですよと怖い顔で微笑まれて頬をむにむにと揉みほぐされる。
ちょっと痛いけどお陰で目が覚めてきた。

「イブの夜なら、教会のゴスペルコンサートに行こうと思ってるんだけど」

「丘の上の教会ですか? レストランが併設された結婚式場の?」

「そう、そこ。友達がお姉さんと一緒に参加してるから、是非来てねって誘われたの」

「何時からです?」

「18時開場。コンサートはたぶん一時間くらいかな。光秀も一緒に行く?」

光秀は「そうですね」と頷いた。

「せっかくですから、コンサートの後は隣のレストランで食事をして帰りましょう」

「それって……」

揉みほぐされて血行がよくなった頬が火照るのを感じる。
クリスマスイブの夜に一緒にコンサートに行って、レストランでディナーだなんて。

「何だか恋人同士のデートみたい」

「馬鹿ですね」

光秀は瞳を細めてフフと笑った。

「勿論、デートに誘っているんですよ」



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