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ある日の放課後。
辺りを気にしながら足早に空き教室へと向かう猿飛佐助の姿があった。

彼はとある目的のためそこへ向かっていたのだが、ここまで誰にも見つかっていない。
世が世なら忍として主君に仕えていただろう彼にとって、人目につかずに移動するぐらい造作もない事だった。


目的地に到着した佐助が、小さく三回ドアをノックする。
すると、室内から男の声が聞こえてきた。

「恋の呪文は」

「…スキトキメキトキス」

佐助が答えるや否やドアが開き、彼は素早く中へと身を滑り込ませた。
暗い教室の中に集まっていた者達の視線が一斉に佐助に注がれる。

「おお、遅かったではないか、佐助!」

「もう皆集まっているよ」

「途中で厄介なのに捕まってたんでね。いや〜、参った参った」

ドアを開けて佐助を招き入れた半兵衛に、佐助が肩を竦めて苦笑する。
先に来ていた幸村の所へ行く前に、彼にはどうしても確認しておきたい事があった。

「あのさぁ…あの合言葉って誰の発案だっけ?」

「僕だが」

半兵衛がさらりと答えた。

「なんで『さすがの猿飛』!? 俺様達の世代は普通知らないでしょ!」

「天音が好きなんだ。彼女には小さな頃から新旧問わず幼馴染み同士が相思相愛になるアニメや漫画を片っ端から観せて洗脳してきたからね。その中でも、幼馴染みの男女は結ばれるものなんだと天音に強く印象付けるのに実によく役立ってくれたよ、『さすがの猿飛』は。同じ名前の君にも一応感謝しておこう。猿飛佐助君」

「もうどこから突っ込めばいいかわかんない」

「そういう君も熱心に観ていた口だろう? それはそうだろうね、ヒロインは主人公の幼馴染みの美少女くの一なんだから。誰かさん達と同じじゃないか」

「さーて、お仕事お仕事!」



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