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生まれた時から小学校低学年までの幼年時代を過ごした街。

6年ぶりに戻って来たこの街は、懐かしい面影を残している場所もあれば、全く変わってしまっている場所もあった。

例えば、幼馴染みの半兵衛と一緒に遊んだ近所の公園。
砂場は潰されていたけれども、ブランコやジャングルジムなどの遊具は記憶にある姿のまま残っていた。

自宅に向かう車の中から眺めただけでこうなのだから、実際にあちこち歩いてみたらもっとそんな懐かしさと変化を感じるに違いない。

そして、それは街だけでなく、隣家に住む幼馴染みの少年も同じだった。

「お帰り、天音」

こちらへ戻って来た天音を微笑んで迎えてくれた彼は、懐かしい面影が確かに残っているものの、超のつく美少年になっていたのである。

ふんわりと柔らかく波打つ銀髪は陽光に透けて輝いていて、どちらかと言えば中性的な美しさを感じさせる綺麗に整った顔立ちには、甘い微笑みが浮かんでいた。
昔から女の子みたいに綺麗な男の子だったが、高校生になった今の半兵衛は、キラキラした王子様のような容貌の美少年に成長していた。



その日の夜は、半兵衛と彼の両親を招いて再会祝いの夕食会が開かれた。
元々引っ越すまでは竹中家とは家族ぐるみの付き合いをしていたのだ。
父の仕事の都合で一度海外へ引っ越し、その後日本の別の県に引っ越し、そしてまたこの街に戻って来た天音の家は、再び半兵衛のお隣さんとなった。

同窓会のそれに近いノリで盛り上がる両親達とは違い、天音はまだ距離感が掴めずに借りてきた猫のように大人しくしていた。

「またうちの天音と仲良くしてあげてね、半兵衛君」

にこやかに話しかけた母に、半兵衛が「勿論です」と愛想のよい笑顔を返す。
それに気をよくして母は今度は天音に話をふってきた。

「良かったわね、天音。また半兵衛君とお隣さんになれて。引っ越す時なんて半兵衛君に抱きついて泣いてたものねぇ」

「あ、あの時はまだ小さかったから…!」

「そうそう。あの時は可哀想だけど可愛かったわ、天音ちゃん」

「うん。すごく可愛かった」

半兵衛母子の言葉に天音は赤くなって俯いた。
大人というのは、どうして子供が小さかった頃の話をまるでつい昨日の出来事のように話すのだろうか。
話題にされるこちらとしてはいたたまれない気持ちになるので対応に困ってしまう。



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