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性欲薄そう、だとか、淡白そう、といった予想はことごとく裏切られた。

この男にSっ気があることをすっかり失念していた。
たっぷり時間をかけて、じっくり、ねっとり、ねちねち苛めるタイプだったというわけだ。

「相手が君だからだよ」と半兵衛は言うが、息をするように嘘をつける人なだけに、本当かどうか疑わしい。

今日もそうして苛めだか可愛がりだかをたっぷり味わった後、天音は半兵衛の意外に逞しい腕にまだ火照りが残る身体を預けて、穏やかで満ちたりた時を堪能していた。


「夏休みには何処かに旅行に行こうか」

天音の髪を撫でながら半兵衛が言った。
ただでさえ艶のある美声が甘ったるい響きを帯びていて、なんだか少しくすぐったい。

「行きたい場所はあるかい?」

「半兵衛さんと二人でのんびり出来る所なら何処でもいいです。温泉とかはどうですか?」

「いいね。どうせなら離れの個室になっていて、専用の貸切り露天風呂が付いているところがいいな。探して予約しておこう」

「その専用の貸切り露天風呂で何をするつもりですか?」

「ふふ…分かっているくせに」

妖しく笑う半兵衛に優しげな手つきで背中を撫でられる。

「勿論、湯に浸かるんだよ。一緒にね」

「そうですよね。温泉ですもんね」

天音もあえて素知らぬふりでそう返した。
本当にそれだけならどんなにいいか。


「あ、そろそろご飯の支度しないと」

視界に入った時計の針は午後六時を示していた。

「まだいいよ」

「私ももう少しのんびりしたいですけど、そうすると食べる時間が遅くなっちゃいますから」

一人なら簡単に済ませるところだが、半兵衛にはちゃんとしたものを作ってあげたい。
放っておくと簡易栄養食品で済ませてしまう人なのだ。

半兵衛の腕の中から抜け出し、手を伸ばしてベッドの下に落ちていた下着を拾う。
シーツの中でもそもそと下着を身に付けたところまでは良かったものの、服を着るためにはベッドから出なければならない。

「半兵衛さん、ちょっとだけ向こうを向いてて下さい」

「どうしてだい?」

「服を着たいんですけど…その…恥ずかしいから…」

視線を逸らしてそう訴えれば、桜色をした唇の両端が吊り上がった。

「今更隠す必要もないと思うけどね」

「だ、だめですっ!すぐ済みますからっ」

おかしそうに笑う声を背中で聞きながら天音はベッドから降りた。
フローリングの床の上に敷いたラグにぺたんと座り、脱がされた時とは逆の順番で衣服を身に付けていく。



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