数日後。
タマが男子テニス部で飼われることになったと、鳳くんと若くんが報告に来てくれた。
生きている猫なら、世話とか何とかの問題が生じるものだが、何しろタマは幽霊なので、食事や排泄の必要がないというのが最大の要因になったようだ。

早い話が、「好きにうろうろしてろ」ということである。

タマは宍戸くん以外の部員にも懐いたようだ。
特に、相手をしてくれる鳳くんと、何故か跡部くんによく懐いているということだった。

部室で着替えていると、突然足に、すりっとすり寄って来られるのでドキッとしてしまうらしいが、それはもう仕方ないとして、みんなこの見えない猫を自分なりの基準で受け入れているようだ。

猫嫌いの部員が「なんか猫臭くね?」と言ったのをきっかけに、ペット用の消臭剤も常備されるようになったのだとか。

「跡部さんが七海さんに解決したお礼をしたいそうです」

「解決してないよ?」

「まあいいんじゃないですか。跡部さんにとっては解決したことになってるんでしょう」

若くんはクールに言った。

「特に、ビビッて部室に入れなかった人が入れるようになっただけでも充分有り難いんだと思いますよ」

誰のことを言っているのかわかった鳳くんが「日吉」と注意したけれど、彼も微妙に笑っている。
猫好きの鳳くんからしたら、あんな可愛いタマを怖がるなんて理解出来ないということなのかもしれない。

「で、どうしますか?」

「うん、お礼の件は私から直接跡部くんにお願いにいくよ」

若くんは怪訝そうな顔をしていたが、そう、私にとってはこれはお願いなのだ。

放課後、跡部くんにお礼の件を話したら、「そんなもんでいいのか」と快諾してくれた。



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