赤也くんが新しいゲームを買ったとかでわざわざ見せに来てくれた。 よっぽど嬉しかったんだと思う。 内容はシンプルなRPGだが、かなり自由にキャラをカスタマイズ出来るという事で人気のゲームだ。 「で、このパーツの中から好きなのを選んで最大8人までパーティーキャラを作れるんスけど、デフォルトのパーツの種類は限られてて、良さそうなヤツは殆どが有料でダウンロードしなきゃなんないんスよ」 「へぇー…ケータイの無料ゲームみたいだね。課金でアイテム買うやつ」 「そーそー!そんな感じっス!」 「で、買っちゃったんだ、有料パーツ」 「買っちゃいました。お陰で半年ぐらいずっと小遣い無しなんですよね。マジヤベェっス」 「こらこら…」 真田くんが聞いたら「たるんどる!」と怒られそうな話だ。 赤也くんも同じ事を考えたらしく、副部長には内緒にして下さいよと念を押された。 「そんなことより見て下さいよ、これ!これを見せるために持って来たんですから」 赤也くんが差し出したゲーム機の画面を覗き込んだ途端、思わず吹き出してしまった。 「なにこれ!仁王くんにすごいそっくり!」 「俺の渾身の力作、立海レギュラーパーティーっス。仁王先輩のジョブはもちろんモノマネ師ですよ」 画面の中には仁王くんそっくりなキャラが映っていた。 キャラが喋ると、「プリッ」とか「ピヨ」と表示された小さな吹き出しまで出てくる。 しかも、それだけではなかった。 真田くん達に似たキャラまでいるのだ。 「副部長は居相斬りのスキルを修得させたサムライにしました。柳先輩は軍師っス。敵の弱点を見抜いたりするんスよ」 「おおお!すごいね!参謀っぽい!」 僧侶の恰好をした柳生くんそっくりなチビキャラが、「やめたまえ仁王くん!」と言ったり、ゴルフクラブに似た杖で敵をボコボコに殴り倒して「アデュー」と言っているのを見ただけで私の腹筋は既に崩壊寸前だった。 「あれ?でも幸村くんがいないよ?」 「だって、幸村部長っスよ?部長に似せたキャラを作った途端に、突然原因不明でフリーズしたりデータが消えたりしたら嫌じゃないっスか。触らぬ神の子に祟り無しってヤツっス!」 「…あの……赤也くん……」 「ゲームまでイップスにされちゃたまんないですからね!ヒャヒャヒャッ!」 「へえ…なるほどね」 背後から聞こえてきたその声に、笑顔のまま赤也くんが凍りつく。 出来ればこうなる前に幸村くんが後ろに来た事を教えてあげたかったのだが、遅かった。 「ぶ……部長……こ、これはその……ち、違うんス!」 「赤也、ちょっと俺と向こうで話そうか」 幸村くんが指し示す方向には、腕組みをして待ち構える真田くんの姿があった。 ドンマイ。 |