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「はじめちゃんは本当に全然恋愛とかに興味ないの?」

「未だにお子様な誰かさんにわざわざ合わせてあげているんですよ。感謝して欲しいですね」

心配して聞いたのに鼻で笑われてしまった。

「ボクが好きな子がいるなんて言ったらパニックになりそうじゃないですか」

「ならないよ!」

「んふっ、さあどうでしょうね」

「ならないよ!」

「まあ、そういうことにしておいてあげますよ」

悠然とした態度で笑って、観月は再び人間観察へと戻った。
隣でむっと膨れている七海は軽く放置だ。
何とかギャフンと言わせられないかと七海は会場を見回した。

この会場の中にも、大勢の男子部員の中にちらほらと混ざっている女の子達の姿が見える。
各校のテニス部だけが招待されているパーティーなので、彼女達も当然テニス部の関係者だ。
マネージャーや部員の身内ということで、やはり男子に比べて圧倒的に人数は少ない。

部員のファンなどは喉から手が出るほどこのパーティーの招待状を欲しがっただろう。

「はじめちゃんも他の学校の女の子と話してくれば?情報収集のために」

「嫌ですよ面倒臭い」

本当に嫌そうな顔で言う観月を見て、七海はちょっと笑った。

聖ルドルフの頭脳としてテニス部を勝利に導くためには手段をいとわない所がある観月だが、色仕掛けには嫌悪感を抱いているようで、他校の女子を引っかけて情報収集するなんて事はしなかったし、七海をスパイ代わりに使う事もなかった。
ただ単にそんな事をしても意味がないし無駄だと考えているせいかもしれないが。

それなら、と七海は話題を少し変えてみた。

「跡部くんに聞いたんだけど、氷帝は准マネージャーと正マネージャーがいるんだって」

「やる気と能力で格付されるわけですか。人数が多いのも理由の一つでしょうが、浮わついた気持ちで入部した人間を篩落とすシステムなんでしょうね。実に合理的なやり方です」

「そういう人はやっぱり跡部くんや部員の人が目当てなんだろうなぁ」

「気になりますか?」

「え?」

「跡部くんの女性関係がそんなに気になりますか?」

思いもよらない方向で食いつかれ、七海は目を丸くして観月を見た。
真剣な眼差しで七海を見据えたまま返事を待っている観月の視線の強さに狼狽えながら、「うん、それはまあ…」と続ける。

「跡部くん、いつもすごい数の女の子に囲まれてるから、その子達全員に命を狙われかねない状態で跡部くんの彼女になるって絶対大変だと思って。きっと跡部くんを女の子にしたみたいな人じゃないと務まらないよ」

「女性版の跡部君ですか……想像するだけで恐ろしいような気もしますが、まあ、概ね同感です」

「ね、絶対普通の女の子じゃ無理だよね」

観月の視線が和らいだことで、七海は内心胸を撫で下ろした。


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