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全ての練習試合が終了した。
雨も大分小降りになってきたようだ。

「七瀬さん」

「は、はいっ!」

一通り挨拶などが済み、いざ解散となったところで突然呼び止められて、七海は飛び上がらんばかりに驚いた。
観月のお陰で大分イケメン耐性がついてきたと思っていたけど、相手はそんなものを遥かに凌駕する存在だった。
あまりにも神々しい美貌に、照れるとか恥ずかしがるのを越えてビビってしまったほどだ。
その反応を警戒しているせいだと思ったらしく、「驚かせてごめん」と、それはそれは柔らかく微笑まれた。

「携帯ある?」

「え、あ、はい、持ってます」

「アドレスと番号交換しよう」

「えっ?」

ダメかな、と微笑まれて断れるわけがない。
七海と幸村はお互いの携帯電話を向き合わせて赤外線で番号を交換し合った。
それを見た観月が顔を歪める。

「…幸村くん」

「フフ…保護者が睨んでいるから、そろそろ退散するよ。今度またゆっくり話そう」

優しく髪を撫でられて七海は固まってしまった。

ふふ、と悪戯っぽい笑みを漏らした幸村が、七海に軽く手を上げて練習施設から出て行く。
他の立海メンバーも彼に続いた。

細かい雨粒が幸村の髪や肩に当たって跳ね、薄日を受けてキラキラと輝いている。
それはまるで光を纏っているようで、幻想的な光景だった。

王子様……いや、神様みたいな人だ。

七海は幸村のアドレスが入った携帯電話を両手で胸のあたりに捧げ持ったまま、彼が去って行くのを見つめていた。


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