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「観月さん!七海さん!」

呼びかけられた声のほうを見ると、裕太くんがお兄さんの不二くんと連れだって歩いて来るところだった。
彼ら兄弟の間には色々な悩みや確執があったみたいだが、U-17やその後の試合などの経験を経て、今はとても良い関係を築けているようだ。

「こんにちは、裕太くん」

「こんにちは。この前は差し入れありがとうございました。凄くうまかったです。俺までご馳走になってすみません」

「ううん、喜んで貰えて良かった」

「あれ?裕太のことは名前で呼んでるの?」

裕太くんと話していたら不二くんがさりげなく会話に割って入ってきた。
彼ももちろん水着だ。
弟の裕太くんのほうががっしりした体格だけど、不二くんも細いのに腹筋も割れてて、服を着ている時には分からない“男”の部分を感じさせるというか…幸村くんとは違う意味で目のやり場に困る。

「うん。同じ苗字だから、二人とも『不二くん』じゃ混乱しちゃうと思って」

「ふうん…」

不二くんはちらりと弟へ視線を流した。
ギョッとした裕太くんが「俺のせいじゃない!」と言いたげな顔をしたのを見てクスッと笑い、またこちらへと視線を戻す。

「裕太だけズルいな。だったらボクも名前で呼んでよ」

「えっ、でも、不二くんは不二くんだから…」

「“周助”だよ。ほら、呼んでごらん。ボクも名前で呼ぶから」

「えーと………」

その時、「七瀬」と私を呼ぶ声が聞こえてきた。
柳くんだ。
これぞまさしく天の助け。

「あ、呼ばれてるみたい。ごめんね、また後で!」

「逃げられちゃったか。残念」

「兄貴…」

「んふっ、残念でしたね不二くん」

「あ、観月いたんだ?」

「いましたよ!ずっと!!!」


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