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私は高校から青春学園に来たから知らなかったのだが、コーチがマネージャーを置かない主義だったとかで、中等部の男子テニス部にはマネージャーがいなかったらしい。


「分かるような気がする。それってたぶん、ミーハーな理由でマネになりたがる女の子から部員達を守ってくれてたんじゃないのかな」

「ボクもそう思うよ」

汚れ物を入れた洗濯機を回しながら言えば、後ろからのんびりした声が返ってくる。
とてもハードな練習をこなした後とは思えない爽やかさだけど、不二くんの整った顔にはやっぱり汗が浮かんでいた。
サラサラの髪は今は少し湿っていて、毛先からは雫が滴り落ちている。
それさえもキラキラ輝いて見えるのだから美少年は凄い。

「でも、あの人の場合、本当にただのスパルタでマネージャーを置かなかっただけかもしれないけど」

「あはは、厳しいコーチだったんだね。ほら、ちゃんと汗拭いて。風邪ひくよ」

「うん」

清潔なタオルを不二くんの肩に掛けて、それで彼の顔や首筋の汗を拭う。
というか、さっき全員にタオル配ったはずなんだけど。
そう言うと、「向こうのベンチに置いて来ちゃった」と悪びれる様子もなく笑顔を向けられた。
おいおい、配った意味がないよ。

「七海ちゃんがこっちに行くのが見えたから追いかけて来たんだ。きっとタオルも持ってると思ったし」

「今まで自分の身の回りのことは自分でやってたはずなのに、おかしいなぁ」

「手がかかるって?今は優秀なマネージャーがいるからね。ちょっとくらい甘えてもいいじゃない」

「こらこら」

どうやら汗はもうひいたみたいだ。
ドリンクはさっき飲んだばかりだから、水分補給は大丈夫だろう。
次の補給タイム用のドリンクもジョグに用意してあるから、後でペットボトルに移しておかないと。



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