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昼休み、いつものように教室で仲が良い友達達とお弁当を食べようとしたら、何故か私以外の三人が不二くんの話で盛り上がりはじめた。

なんでも、他のクラスの女の子が昨日からやたらと『不二くんと手塚くんの行き過ぎた友情』について熱く語りまくっているのだとか。
友達のケータイにもメールでそのような噂話が来たとかで、あちこちに飛び火しているらしい。

「2組の森さんだっけ?この前不二くんに思いっきりフラれてたからねぇ。それで壊れちゃったのかもねぇ」

「手塚くんとはチームメイトでライバルだから私達じゃ分からないような絆があるんだろうし、ただ単に今は別に恋愛に興味もなくて、テニスをしてるのが楽しくて仕方ないっていうだけに見えるけど」

「そりゃアンタ、不二くんが振り向いてくれないのはきっと異性に興味がないからに違いない!とでも思わなきゃやってらんないんでしょ。そこは察してあげないと」

「嫌がらせってこと?」

「不二くんに対して仕返しのつもりなんじゃない?どう考えても自分の首絞めてるけど、今はまともに頭が働かない状態なのかもね」

「酷すぎる」

そんな噂が広まってるなんて、きっと二人とも嫌な思いをしているだろう。
それにしても、そんな事になってるなんて全然知らなかったと言ったら、三人は微妙な顔で私を見て、「七海は手塚くんと仲が良いから」と、分かるような分からないような事を言った。

確かに私は手塚くんと仲が良い。と思う。
不二くんは……実はちょっと苦手だ。

皆は不二くんのことを優しいというけれど、優しいだけの人じゃないような気がして、それがずっと不思議だった。

いちいち含みがあるような気がして、怖い、なんて言ったら皆にフルボッコにされてしまいそうだけど、正直なところ、やっぱりちょっと怖い。
不二くんと話してみて、初めて、「優しそう」と「優しい」の違いが身に染みて分かった気がする。
もちろん、そんな事を言えばやっぱりフルボッコになるのは目に見えているので、私は貝のように口を閉じるしかない。

そんな事を考えているからバチが当たったのだろうか。

その日の放課後、私は不二くんが知らない女の子に告白されている現場を目撃してしまった。



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