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「おお、七瀬さん、丁度ええところに来たな」

白石くんにチョイチョイと手で招かれ、内緒話をする態勢をとった彼に合わせて私も耳を傾けた。

「それで、七瀬さんはどっちを選ぶんや?」

「え?」

質問の意味がわからず聞き返した私に、何故かドヤ顔で白石くんが続ける。

「隠さんでええ。より強いオスに惹かれるのはメスの本能や。より優秀な遺伝子を持つオスを望むのは、生物として無駄のない正しい欲求やからな。で、七瀬さんは幸村と不二どっちの子供を産みたいんや?」

「俺だよね、七海」

「ボクだよね、七海ちゃん」

いつの間にか間近に立っていた幸村くんと不二くんが問いかけてくる。
この人達は意外とお茶目なところがあって、ノリがいい。
だが何もこんな話題にまで全力で食いついてこなくていいのにと思わずにはいられなかった。

「ボクとじゃイヤ?」

「いや、あ、嫌じゃなくて、そういう問題じゃないから不二くん」

「そうだよ不二。七海は俺と結婚して子作りするんだから」

「ゆゆゆゆ幸村くんっ!!!!!!」

「七瀬が不二と幸村に結婚を迫られたという噂が流れる確率88%」

「ちょ、ややややややめてよっ、乾くん!」

なんてことを言い出すのかと慌てて抗議すると、右側にニュッと人影が現れた。柳くんだ。

「その噂のせいで学校に来づらくなって休んだことで、今度は実は七瀬はもう妊娠しているらしいという噂が流れる確率72%」

「やめてもう許してお願いだからやめてください」

半泣きになりながら懇願すると、彼らは愉快そうに笑った。
他のみんなも笑っている。
笑い声は段々大きくなっていき、ついには超音波のような耐えがたい音へと変わった。
両手で耳を塞いでもまだ聞こえてくる。

なんで、どうして、と困惑しながら目を開いたことで、それは実際には、ピピピピという電子音であることに気が付いた。
聞き慣れた携帯電話のアラームだ。

「……うわぁ……」

ベッドの上に上半身だけ起き上がった状態で私は頭を抱えた。
また随分とんでもない内容の夢を見てしまったものだ。
しかもこれが今年の初夢。
妄想乙としか言い様がない。

微妙な気持ちになりながら、目覚めるきっかけとなった携帯電話を開いてみると新着メールが2通来ていた。

幸村くんと不二くんからそれぞれ初詣に行かないかというお誘いメールだった。

いつもなら悩むことなんてなかっただろう。
しかし、まだ脳裏に残っている夢の残滓が返信メールを打つ手を躊躇わせた。
あれは断じて願望なんかじゃない。私はそんな高望みなんてしない。したくない。

でも、だとしたらあの夢は──



不意に手の中で携帯電話が鳴りはじめた。
今度は着信を知らせる音楽だ。
画面に表示されていた名前は、もちろん、


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