これの続き
*五条ルート


呪詛師の呪いのせいで他人の私に対する好感度がその人の頭上に浮かんでいるハートとして見えるようになって一週間が経った。
七海さんが密かに探してくれているけど、私を呪った呪詛師はまだ見つかっていない。
私の唯一の取り柄である探知系の術式をもってしても見つからないのだから、よほど上手く隠れているのだろう。
とはいえ、ただ「視える」だけなので、それほど困っていないというのが実状だ。

ただ、ある人のことを除いては。

五条さんである。
五条さんの頭上に浮かぶハートの禍々しい色を目の当たりにしてすっかり怯えきってしまった私は、あの日以来ずっと五条さんを避け続けていた。しかし。

「お前、最近僕のこと避けまくってるよね」

相手はあの五条悟である。逃げ続けるのなんて、どだい不可能だったのだ。

「ひっ」

あっさりと捕まってしまった私は五条さんを見て息を飲んだ。
ハートの赤黒さが増している。それはもう一目見てヤバいとわかるくらいに。
ぶるぶる震える私に、五条さんは不審そうな顔をした。

「なんで僕を見て怖がるかなあ。こんなに優しくしてやってるのに──お前、何が見えてるの?」

ひえっ、バレてる!

「た、助けて七海さ、」

「お前は本当に僕を煽るのが上手いね」

逃げようとしたら、ダン!と物凄い音を立てて顔の横の壁に手を突かれて遮られてしまった。
恐る恐る五条さんのほうを見る。
いつの間にか目隠しが外されていて、この世のものとは思えないほど美しいご尊顔が惜しげもなくさらされていた。
私はこの顔にすこぶる弱い。
そのことを知ってか知らずか、五条さんはその顔をずいと近付けて来る。

「ほら、白状しなよ」

私は洗いざらい白状した。
呪いのせいで、他人の私に対する好感度がその人の頭上に浮かんでいるハートとして見えるようになったこと。
五条さんのハートの色があり得ないくらい禍々しくて怖くて堪らないこと。
もうこれ以上はないというほど全部白状した。

「なるほどね。赤黒いのは嫉妬とか独占欲の表れだろうね。お前が七海に懐いているのを見て嫉妬してたから。それなのに、お前は僕のことを避けるし。かなり煮詰まってたから、そりゃ赤黒くもなるよ」

まあ、いいや、と五条さんは笑った。
あまりの淫靡さと美しさに目の前がくらくらした。これは良くない兆候だ。丸め込まれそうになっている。

「それなら話は早い」

「えっ」

「好きだよ。自分でも怖くなるくらい、愛してる」

切なげな声音で五条さんが言った。
煌めく六眼に縫い止められたように身体が動かず、五条さんの顔を見つめることしか出来ない。

「お前が欲しくて堪らない。僕のものになってよ」

甘い美声で懇願されて心が揺れる。
そんな私の隙を見逃す人ではなかった。

「ほら、捕まえた」

嬉々として私を捕獲した五条さんは、私をひょいと抱き上げると、どこかへトんだ。
一瞬にして見知らぬ部屋に移動させられた私がきょろきょろと辺りを見回すと、五条さんは私を抱き上げたまますたすたと歩きながら説明してくれた。

「僕のセーフハウスの一つだよ。高専から一番近いから寝に帰ってる所」

五条さんのセーフハウス。
それはわかったけど、何故ここに連れて来られたのだろう。
寝室とおぼしき部屋に入ると、五条さんは私をキングサイズのベッドの上に降ろして私に覆い被さってきた。

「じゃあ、いただきます」



そうして、私は五条さんに抱かれた。
抱かれてしまった。



「身体は大丈夫?どこか痛いとこある?」

「……あちこち痛いし、下半身が重怠いです」

「ごめんね。嬉しくて、ついがっついちゃった。朝食は僕が作るからゆっくり寝てなよ」

甘い声でそう告げた五条さんに、ちゅっとキスをされる。
この人がこんなに甘々になるなんて誰が想像出来ただろう。

昨夜、挿入はもちろんのこと、一晩の内におよそ私が想像もしていなかったことまでありとあらゆることをやられた。
私の身体で五条さんが触れていない場所はどこもないくらいに。
そして最後には、あろうことかナマで膣内射精までされてしまったのだった。

「好きだよ、なまえ。泣かないで」

両手で顔を覆ってしくしく泣き出すと、五条さんは優しく背中をさすってくれた。
それから、そっと私の手を外して目元にキスを落とされる。
艶のある柔らかい唇が、何度も何度も頬や鼻先や唇に落とされていくたび、胸の奥がきゅんとなる。
昨夜の野獣のような彼とはまるで別人みたいに優しい。
見れば、ハートははっと目を見張るほど鮮やかな真紅に染まっていた。五条さんの中で何かが変わったのだろうか。
私は完全に困惑しきっていた。

「五条さんは私をどうしたいんですか」

「とことん可愛がって骨の髄までしゃぶり尽くすつもりだけど?」

「言い方!」


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