朝起きたら、他人の私に対する好感度がその人の頭上に浮かんでいるハートとして見えるようになっていた。
五条さんの六眼に頼らなくてもわかる。
私は呪われているのだと。
十中八九、昨夜の任務で捕まえ損ねた呪詛師の仕業だろう。

野薔薇ちゃんに相談がてら色々試してみたところ、好感度が上がるとハートがピンクやオレンジ色に染まっていくらしい。
野薔薇ちゃん、真希ちゃん、棘くん、パンダくんはハートの半分くらいまでオレンジ色に染まっていて、恵くんはハートのかなり上のほうまでピンク色に染まっていた。
色の違いはまだよくわからない。

「あー、これは見事に呪われてるね」

職員室に入ると、一番会いたくなかった人物に見つかってしまった。
私を見てケラケラ笑っている五条さん。
その頭上に浮かんでいるハートを見て私はギョッとした。
ハート全体が赤黒い色で隙間なく染まっている。
なにこの怖い色。

「どうしたの?そんな怯えた顔されると興奮するんだけど」

「怖いからやめて下さい」

その時、後ろのドアが開いて七海さんが入って来た。

「な、七海さん助けて!」

五条さんから逃げるように七海さんの背後に隠れる。

ぎゅいーん。
七海さんのハートがあっという間に全て真っ赤に染まり、好感度が完ストした。真っ赤なハートがどっくんどっくん脈打っている。
えっ、いまので!?

私の視線に気付いた七海さんは、ちらと私を振り返ると、またすぐに前に向き直って指先で眼鏡を押し上げた。
ハートで好感度がわかってしまっているため、そのクールな所作も照れ隠しにしか見えない。
どうしよう。めちゃくちゃ恥ずかしい。

「またなまえさんをいじめているんですか。その内本当に嫌われてしまっても知りませんよ」

「なまえが僕を嫌うって?あり得ないね」

五条さんの自信はどこからくるのだろう。
毎日いじめられて逃げ回っている私にどうして好かれていると思えるのか。

「なまえは僕のお嫁さんになるんだから」

「は?」

「えっ」

七海さんが呆れた風にため息をつく。

「馬鹿なことを言ってないで早く報告書を提出して下さい。また学長に叱られますよ」

「はいはい」

ひらひらと手を振って五条さんはデスクに向き直った。
背中を向けられたことに安堵する。
私をお嫁さんにすると言った時の五条さん、物凄く怖かった。
本気じゃないと思いたい。

「なまえ」

五条さんに背中越しに名前を呼ばれてヒッとなる。

「僕は本気だからね」

思わずまた七海さんの後ろに隠れると、どっくんどっくんとハートが脈打つペースが速くなった。

「本気にしては駄目ですよ。行きましょう、なまえさん」

「は、はい」

窮地を救われた思いで七海さんにエスコートされて職員室を出る。
冷静そのものの眼差しが私に注がれ、ちょっとドキッとした。

「それで、どんな呪いなんですか」

ごめんなさい。口が裂けても言えません。


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