誰かに頭を撫でられているのを感じて目が覚める。

あれから何時間経ったのだろうか。
既にシャツとズボンを身につけたザンザスがベッドに腰かけて、真奈の髪を撫でていた。

「痛むか」

静かな問いかけに、小さく首を横に振る。

痛みと呼べるほどの痛みはなく、まだ異物が入っている感覚と、腰の奥に鉛を埋め込まれたような重い怠さだけが残っていた。

むしろ、あんなものが挿入っていたのにこの程度で済んでいるのが不思議なくらいだ。
ザンザスは余程優しく扱ってくれていたのだろう。
真奈は思い出してちょっと赤くなった。

コンコンコン、とドアがノックされる。

「入れ」

ザンザスが短く応じると、マーモンが入ってきた。

「ボス、ちょっといいかい?」

マーモンが真奈には聞こえない小さな声でザンザスの耳元で何事か報告する。
ザンザスはすぐに立ち上がった。

「こいつを見ていろ」

そう言いおいて、ザンザスは部屋を出て行った。

「さて、と…」

ザンザスが部屋を出て行くと、マーモンがその場から動かないまま言った。

「とりあえず着替えが先だね。ボスが戻って来た時にまだそんな格好をしてたら、『誘ってんのか』って言われてまた食われるよ」

「うん…私もそう思う…」

昨夜ので十分過ぎるほど思い知った。
もはや、自分なんて性欲の対象にはならないだろうなどとはとても思えない。

「シャワーでも浴びておいで。お風呂でもいいけど。その間に着替えは用意しておくから」

「うん、有難うマーモン」

「礼は必要ないよ。どうせボスから特別ボーナスをふんだくる予定だからね」

マーモンがさっさと寝室から出ていく。
男の子なら紳士だ。
女の子なら(たとえガメツクても)細かな気遣いの出来る素敵な女性である。

真奈はシーツを身体に巻き付けると、言われた通り浴室に向かった。


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