「ふえぇ……」
「泣かないで。誰よりも大切にすると約束します。貴女を愛しているのですよ、本当に。心の底から、貴女だけを」
「やだやだ、こわい」
「大丈夫、優しくします」
まるで子守歌でも歌うように優しく繰り返される求愛の言葉に、次第に頭と身体が麻痺していくのがわかった。
底無し沼にズブズブと沈んでいくような錯覚。
彼に愛されて甘やかされる内に、いずれはこの恐怖心も麻痺して感じなくなってしまうのだろうか。
「さあ、行きましょう」
開けっ放しになった窓から一陣の風が吹き込んできたと思ったら、次の瞬間にはもう室内から二人の姿は消えていた。
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