──しまった。 判断を誤ったのだと気付いたのは、ハーツラビュル寮の敷地内にある庭園に逃げ込んだ後だった。 いつの間にか、この場所へ来るよう鬼達に誘導され、『追い込まれてしまっていた』。 恐らくはハーツラビュル寮の生徒の連携プレイによるものだろう。 何のために? 決まっている。 彼らの王に獲物を差し出すためだ。 私の考えの正しさを証明するように、リドルが姿を現した。 「やあ。やっと来たね、なまえ。待ちくたびれたよ」 迷う暇もなく、私は目の前にあった生垣迷路の入口に飛び込んだ。 「逃げても無駄だよ、なまえ」 リドルの声が追いかけてくる。 分かれ道を右に左に曲がりながら、緑の迷宮の中を駆けていく。 「あっ……!」 行き止まりにぶつかり、方向転換しようとしたところで、こちらに近付いて来る足音が聞こえてきた。 どうしよう、と辺りを見回すが、逃げ道はない。 「もう鬼ごっこは終わりかい?」 「リ、リドル……」 心臓が痛いくらいに鳴っている。 ゆっくりと歩み寄って来るリドルは、私と違って息も乱していなかった。 「言ったはずだよ。逃げても無駄だと。ここはボクの庭だ。キミがどこへどう逃げようともボクには手に取るようにわかる」 「そんな……」 がくりとその場に膝をついた私に向かって屈み込み、リドルが優しい手つきで乱れた前髪を払う。 彼は甘く蕩けるような微笑みを浮かべていた。 先ほどまでとは別の意味で心臓がドキドキと鳴り始める。 「何も心配は要らない。キミはただボクに身を任せてくれればいい」 桜色の花びらのような唇が私の唇に重なった。 「捕まえた」 |