真奈がボンゴレ本部を出た翌日。 その報告書は一日遅れで日本にいるボンゴレ10代目・沢田綱吉のもとに届けられた。 親切にも日本語で書かれており、実に簡潔な文章だったので、綱吉の頭でも容易に理解できた。 問題はその内容だ。 『城島犬・柿本千種・クローム髑髏の三名が復讐者の牢獄を襲撃するも、失敗し逃走。 以後の消息は不明』 報告書にはそう書かれていた。 「リボーン、これって……」 「昼寝中だ。邪魔するな」 ヒットマンとしても家庭教師としても超一流の手腕を誇る綱吉の師は、ハンモックの中で寝返りを打ち、無情にも教え子に背を向けた。 「そんな場合じゃないだろ!骸、あいつ、また脱獄しようとしたんだよ!?しかもクローム達は行方不明で──うわわわわっ!!」 ズガガガガッ! 何処からか取り出したマシンガンで足下を狙撃された綱吉は慌てて飛び退いた。 「うるせぇぞ、ツナ。マフィアのボスがそれくらいの事でガタガタぬかすな」 「お、お前なぁ…」 「それより、真奈に連絡が取れるか試してみろ」 「へ?真奈?」 急に双子の姉の名前を出された綱吉が、ぽかんとした顔でリボーンを見る。 真奈は9代目に呼ばれてイタリアのボンゴレ本部を訪れているはずだった。 彼女は綱吉に代わってこまごまとした用事を片付けてくれる、いわば秘書のような役目を務めてくれているのだ。 その真奈がどうしたというのだろう? 「いいから、早くしろ」 撃たれてーのか。 ギラリと黒光りする銃口を向けられた綱吉は、ひっと息を飲んで慌てて電話を探した。 散らかり放題の部屋の床から携帯電話を探し出し、短縮ダイヤルにセットしてある姉の番号を呼び出す。 真奈には仕事用にとリボーンが調達してきた特殊な携帯電話を持たせてあるのだ。 しかし─── 「………出ない」 「そうか。やっぱりな。もういいぞ」 リボーンのお許しを得た綱吉は、怪訝そうな顔をしながらも通話を諦めた。 「忙しくて出られない、とか…?」 「緊急用の電話だぞ。鳴ったら必ず取るよう言ってある」 「待てよ…それってヤバくないか?」 「そうだな。誰かに攫われたかもな」 「はああぁぁあぁあ!?お前っ、なに冷静に言っちゃってんだよ!?誘拐されたんだとしたら大事件じゃないかっ!!!」 「落ち着け。犯人の見当はついてんだ。帰ってくるかどうかはともかく、真奈が無事なのは間違いねえから安心していいぞ。あいつも大概煮詰まってきたんだろ。いい加減、水遊びも飽きてきた頃だろうしな」 「あいつ?あいつって誰のことだよ?ちょ、おまっ、寝るなって!!」 リボーンはまたハンモックの中でころんと寝返りを打ち、わけが分からずパニック状態になっている綱吉を残して遅い昼寝(シエスタ)の続きに入った。 |