人一人抱えているというのに、まるでダメージを受けた様子もなく無事地面に着地した骸はそのまま校門へ向かおうと歩き出したが、直ぐに足を止めることとなった。
校門の前に黒い学ランをなびかせて佇む人物が立ちはだかっていたからだ。

「騒がしいと思ったら…鼠が紛れこんでいたみたいだね」

ジャキンッ!とトンファーを構えながら雲雀が笑う。
骸は真奈を下ろして、自らの背に庇うように背後へと押しやった。
その手に先端が三又に分かれた槍が現れる。

「今度こそ咬み殺してあげるよ」

「出来るものならどうぞ。また這いつくばらせてあげますよ」

骸は左手を軽く上げて雲雀を挑発しつつ、右手で三叉槍を構えた。

キャーッと、遠巻きに見守っているギャラリーから、主に女生徒のものらしき黄色い声が上がる。

気持ちはわかる。
確かに格好いい。
何も知らないギャラリーにしてみれば、この異常事態も学園祭のパフォーマンスの一つにしか見えないのだろう。
さぞかし楽しい見世物に違いない。
真奈だって出来れば傍観者に混ざりたいくらいだ。

「初めから気に食わなかったんだよ。二度とその子にちょっかい出せないように、グチャグチャにしてあげる」

「懲りない人ですね、君も。その鳥頭にもちゃんとわかるように、真奈さんは僕のモノだと教えて差し上げますよ。君の命と引き替えにね」

「ちょ、ちょっと待って二人とも!」

何やら物騒なやり取りを交わす二人を見て、真奈は慌てて止めに入った。

「確か、守護者同士の私闘は禁止されてるって、リボーンが」

「いやですねぇ、真奈さん。これは私闘ではなくお遊びですよ」

嘘つけ!
突っ込む暇もなく、雲雀のトンファーと骸の三叉槍が激しくぶつかり火花を散らした。

「咬み殺す──!」

「堕ちろ、そして巡れ」

「リ…リボーン!リボーン!助けてーー!!」

蒼白になった真奈が保護者代わりのヒットマンの名を呼ぶ間にも、確実に被害は広がっていく。

結局、キレた真奈と駆けつけてきたリボーンが無理矢理止めに入るまでに、B校舎は半壊。
その年の学園祭は1日目で中止になってしまったのだった。



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