パン!パン!と鳴った二発の花火を合図に、今年も並盛中学校の学園祭は始まった。

中学校には珍しく全日一般公開しているので、この学園祭には近隣の住人などの一般人もやってくる。
体育祭と並ぶ毎年の名物イベントだ。

「しかしダルいっスね。ふけましょーか、真奈さん」

開幕とともに校門前に並んでいた人々が校内へと押し寄せる様子を窓から眺めながら、いかにも面倒くさそうに獄寺が言った。

「ダメだよ、獄寺君。まだ始まったばかりなのに」

しょうがないなぁと笑って、真奈はトレイを彼に手渡す。
渋々といった風にそれを受け取った獄寺は、今日は制服ではなくウェイター姿だった。
真奈達のクラスは喫茶店をやる事になっているのである。
しかも、ただの喫茶店ではなく、コスプレ喫茶だ。
教室の中では、いつ客が来ても良いように、コスプレをした生徒達による最終チェックが行われていた。

獄寺はよほど嫌なのか、今度は、こんなカッコでやる意味がわからないとぼやいている。
綱吉が同じ班にいなければ今頃はとっくに逃亡してしまっていたかもしれない。

残念ながら山本はグラウンドで行われる野球部の招待試合との兼ね合いで、綱吉や真奈達とは別の班になってしまっていたので、ここにはいなかった。

「獄寺君、よく似合ってるよその恰好」

「うん、格好いいよね」

「そ…そうですか?」

綱吉と真奈に誉められた事で、獄寺はまんざらでもなさそうに表情を緩めた。
本当に彼は綱吉には弱い。

「俺なんか見てよ。着ぐるみってコスプレだっけ?」

ウサギの着ぐるみを着た綱吉が自分の身体を見下ろしながらぼやく。

「ツナも似合ってるよ。ふわふわしてて凄く可愛い」

「そうですよ!10代目は何を着てもお似合いです!」

「真奈も獄寺君もそれ誉め言葉じゃないから!全然嬉しくないから!」

「でも、京子ちゃんも可愛いって言ってたよ、ツナのウサギ」

「え…!?ほ、ほんとに!?」

途端にデレる綱吉。

なんてわかりやすい。
男子二人のあまりにもわかりやすい反応に、真奈は思わず笑ってしまった。

そういう彼女は、不思議の国のアリスをモチーフとした水色のエプロンドレス姿だ。
蜂蜜色の髪にはヘッドドレス風の白いカチューシャもつけている。
これは試着段階から綱吉達に大好評だった。



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