最初にターゲットになったのは骸だった。
理由は一番ドアに近い場所に座っていたからだ。
何かあった時に一番離脱しやすい位置を選んだ事が仇となった。

「お熱計りましょうね」

まだ少し恥ずかしそうにしながらも、リボーンの指示に従うべく真奈は骸のジャケットに手を伸ばした。
白い指でプチプチとボタンを外し、骸のシャツの中に手を入れて体温計を腕の下に挟ませる。

「ちょっと我慢してね。動いちゃダメだよ」

「落ち着きなさい、沢田綱吉」

「お前が落ち着け!」

骸のアラームはずっと鳴りっぱなしだった。

「これに動揺しないなんて、君は異常です。どこかおかしいんじゃないですか」

「いいよもうおかしくて。むしろおかしくて良かったと心の底から思ったよ今」

当事者である骸はともかく、何故か他からも複数アラーム音が聞こえてくるのはどういうわけなのか。

「37℃……あれ?ちょっとお熱があるのかな」

取り出した体温計を見て首を傾げた真奈が骸の前髪を優しく指で梳き流し、彼の白くてなめらかな額に自分の額をぴたりとくっつける。
黒髪から覗く耳がみるみる赤く染まっていくのが見えた。

「その程度で照れるなんて意外だな」

「くっ…アルコバレーノ…!」

「ピーピー鳴らしながら睨まれても全く怖くねーぞ」

「絶対に許さない絶対にだ…!」

もうやめてあげて!と思ったものの、綱吉のほうもそれどころではなくなった。
バスに新たな刺客が乗り込んで来たからだ。

「あ、ツナ君!」

それはナース服を着た京子だった。
綱吉を見つけた彼女は嬉しそうにバスのステップを上がって駆け寄ってくる。

「リボーン君に言われてお手伝いに来たの。皆でゲームしてるんでしょ?あ、早速お熱計らせてね」

「え、あ…う、うん…」

「少し落ち着いたらどうですか、沢田綱吉。さっきからピーピー鳴りっぱなしじゃないですか。みっともない」

「お前が言うな!!!!!」



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