特殊暗殺部隊ヴァリアー。
真奈にとっては昨日まで敵対していた者達だったが、彼らにとってはそうではなかったようだ。
なんといってもここは10年後の未来だからだ。

「真奈ちゃん!」

室内に入った途端、一際体格の良い男に名前を呼ばれる。
ザンザスに連れて行かれた部屋には既に他のヴァリアー幹部が集まっていた。
どうやらここは談話室か何からしく、形や大きさの違う椅子やテーブルがゆったりと間隔を置いて配置されており、壁際にはミニバーがあるのが見える。

「もう大丈夫なの?ボスったら、容態を聞いても『るせぇっ』って怒って教えてくれないんだもの。心配してたのよぉ!」

真奈は一瞬びくっとして隣のザンザスの袖に掴まったが、マッソウな肉体に似合わぬ心配そうな声で尋ねてくる相手に、おずおずと頷いてみせた。

「センパーイ、あの子めちゃくちゃ怯えてますけどー」

「そりゃ、あんなマッチョなオカマにいきなり迫られたら怯えんだろ、フツー」

光沢のある布地が張られた寝椅子に寝そべっていた金髪の男が、しししっと笑う。
髪型が変わっているが確か彼は獄寺と戦ったベルフェゴールだ。
そして、暖炉の横に立っているのがレヴィ・ア・タンで、真奈に話しかけてきたのがルッスーリア。
室内をぐるりと見渡した真奈と視線が合うと、スクアーロが軽く頷いた。

「顔色は良くなったなぁ。車で見つけた時は真っ青だったから心配したぜぇ」

──車。
ミルフィオーレの。

唐突に白蘭の顔が蘇って、真奈は小さく身を震わせた。
真奈チャン、と呼ぶ彼の声がまだ生々しく耳に残っている。
こびりついてなかなか取れない血の痕のように。

瞳をすがめて真奈を見下ろしていたザンザスが、近くにあったサイドボードから花瓶を取り上げるなり、目にも止まらぬ速さでスクアーロに投げつけた。

「グッ…!」

何故避けられないのか不思議なくらい綺麗にジャストミートしたそれが砕けて、見事な銀髪を汚す。

「クソボスがぁ!いきなり何しやがる!」

「うるせえドカス。余計な事を言ってんじゃねえよ」

年少組が笑い転げ、ルッスーリアがスクアーロを宥める。
ザンザスは真奈を引き連れて暖炉前の一番豪華な椅子に腰を据えた。



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