談話室には既にヴァリアーの幹部が集合していた。
スクアーロ、レヴィ、ルッスーリア、ベルフェゴール、そして新人のフランだ。
寛いでいるとはとても言い難い表情でそれぞれ思考に沈んでいる。

ドアが開く音がその沈黙を破った。

「ボス、真奈ちゃんは?」

入ってきたザンザスを見て真っ先に声をかけてきたのはルッスーリアだ。

「解熱剤を飲ませて寝かせてきた」

椅子にどかりと座ったザンザスに、サングラスを鏡面の如く光を反射させながら、ルッスーリアは心配そうに「そう」と呟く。

「やっぱりミルフィオーレで打たれたっていう薬の影響なのかしらね……」

このアジトに連れ帰って直ぐに真奈の血液と体液を採取し、薬物の特定を急がせたのだが、結果は《不明》。
実存するどの薬物にも該当するものはなかった。
恐らくは独自に開発させた新薬を使われたのだろう。

「私はボスが連れてきた真奈ちゃんを見たとき、マーモンを思い出したわ。ノントゥリニセッテに侵されて衰弱した姿をね」

「貴様、真奈様がアルコバレーノだというのか?」

壁際に立っていたレヴィが怪訝そうな声を上げる。
即座にフランが突っ込みをいれた。

「レヴィさーん、喩え話って言葉知ってます?ちょっとは脳味噌使えよ変態オヤジ」

「なにッ!?」

「…ボンゴレの血(ブラッド・オブ・ボンゴレ)か」

二人には目も向けず、ザンザスが呟いた。
その言葉に即座にスクアーロが反応する。

「まさか……アルコバレーノを弱体化させるノントゥリニセッテみてぇに、ボンゴレの血に作用する薬物を開発したと言いてえのかぁ?」

「完成したかどうかは定かじゃないけど、それに近いものを作ったとは考えられるわね。対10代目対策として」

ルッスーリアが肩をすくめる。

「つまり、真奈は実験台にされたってことかよ」

ベルの低い声に、明るいとは言えなかった談話室に満ちた空気がさらに重く冷たいものに変化した。

「…ドカスが」

不愉快そうに吐き捨てたザンザスが、テーブルの上にあったグラスを蹴り飛ばす。

ブーツの一撃を受けたグラスは吹っ飛んで粉々に砕け散った。



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