ザンザスにグラスを支えて貰いながら、少しずつ水を飲み込む。
そうして半分ほど飲んだあたりで、ザンザスのもう片方の手が真奈の額を包み込むように押しあてられた。
少し熱っぽい感じはしていたのだが、やはり発熱していたらしい。

「これも飲んでおけ」

サイドテーブルの引き出しを開け、そこから取り出した袋から錠剤を一つ摘まんで、口元に運ばれる。
……本当にこの人はどうしてしまったのだろうと戸惑いながら、真奈はそれを水で飲み下した。
さっきからザンザスのほうが熱があるのではないかとしか思えない程の献身ぶりに戸惑うばかりだ。

「食事は後で運ばせる。もう少し寝ていろ」

「うん」

真奈は素直に頷いた。
正直今はまったく食欲がなく、むしろ食べ物を胃袋がちゃんと受け付けてくれるかも怪しいぐらいだと思っていたので、ちょうどいい。

もそもそとベッドに横になると、ザンザスが首元まで布団を引っ張り上げてくれた。
冷たいシーツじゃなくてふかふかの布団だ。
その感触のせいか、突然並盛での日常を思い出して、じわりと涙が込み上げてくる。
不在がちだったけれど頼もしい父に、優しい母。そして────


『綱吉君は死んだよ』


涙が睫毛を濡らし、瞳から溢れ出そうになったところで、大きな手の平に目元を覆われた。

「寝ろ。余計な事を考えるな」

うん、と頷いて目を閉じる。
流れ落ちかけた雫を乾いた指先が拭ってくれた。


いつも側にいた人達は誰もいない。
リボーンも。綱吉も。他の皆も。

いま自分の味方だと確信が持てるのは、かつて綱吉と敵対していた骸やザンザスだけだ。

こんな時どうすればいいかなんて誰も教えてくれなかった。
まだ中学生だから無知でも仕方ないなどと許される状況ではないのだ。

これから自分自身で学んでいかなければならない。
いま自分に何が出来るのか、何をするべきなのかを。



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