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時を刻むのを止めてしまったなまえの身体。
今思えば、これこそがダンブルドアが言っていた『代償』だったのかもしれない。

逆転時計を使って、トム・リドルが生まれた時まで過去に遡る。
そして、今度こそ、彼が幸せになれる未来を、彼が生きられる未来を創る。

そう決意したなまえは、手始めにダンブルドアが生きていた一年前のホグワーツへと時を遡った。
神の摂理に反するこの計画にはダンブルドアの協力が必要不可欠だと考えたからだ。

『未来』についての話は最小限に控た上で自分の計画を説明し、リドルを救うために協力して欲しいと願ったなまえに、ダンブルドアは逆転時計の危険について語った。

逆転時計の使用には危険が伴う。
使い方次第では使用者が命を落とす事もあり、だからこそ魔法省によって厳重に管理されていたのだ。

きちんと許可を得て、使用方法を厳密に制限した上での数時間単位の時間移動ならば問題はない。
しかし、それが50年もの年月をさかのぼるとなると話は別だ。

そんな無茶苦茶な使い方をすれば、使用者の身がどうなるか想像もつかない、とダンブルドアは言っていた。
なまえの身にどのような異変が起こってもおかしくない、と。

それでもなまえの決意は変わらなかった。

そんななまえに、衰弱の色も濃い顔に優しい微笑を浮かべてダンブルドアは一通の手紙を持たせてくれた。

「この手紙を携えてきた者の望み通りにするよう書いてある。それが例えどのような願いであっても必ず従うように、と。これを過去のわしに渡しなさい」

ドス黒く変色してしまった右手が差し出すそれを受け取るなまえに、ダンブルドアは悪戯っぽく瞳を輝かせて微笑んでみせた。

「実は、間違いなくわし本人が書いた手紙であると証明する為に、少々プライベートな事柄を書いてあるのじゃが……中身は見ないと約束してくれるかね?」

「はい、約束します」

「有難う」

ダンブルドアは瞳を閉じた。
恐らくその瞬間、彼の脳裏には様々な事柄が浮かんでは飛び去っていたのだろう。
再び目を開いたダンブルドアの顔には、全てを受け入れた者の穏やかさが戻っていた。

「トムを頼む」

もしも、彼を救えることが出来たなら。

あるいは、誰も犠牲にならない未来を作ることが出来るかもしれない。
失われるはずだった多くの命を救えるかもしれない。

たとえ運命を変える禁忌を犯すことになっても、なまえはトムの魂を救うことを願い、ダンブルドアは彼女に望みを託したのだ。


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