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大人しくしているように、と念を押したスネイプが退室してから暫くして、メモに書かれた品を入れた紙袋を抱えた女生徒が医務室を訪れた。

てっきりパンジーか誰かが来るのだと思っていただけに、二歳年下のあまり親しくないスリザリン生が来た事になまえは驚き戸惑った。
どうしようもなく不安になる。
本当に一体何がどうなってしまったのだろう?

そのスリザリン生は明らかにスネイプから余計なお喋りはしないようにと釘を刺されていた様子で、用件を済ませるとそそくさと立ち去ってしまった。

彼女が立ち去ったのを見届けてから紙袋の中身を確かめる。
中身はメモの内容通りの品だ。

着替えや櫛などの日用品。
その中に混ざって入っていた小さな箱が視界に映った途端、どくん、と一つ鼓動が跳ねた。

適当に選んで書いたリストだが、自分でもはっきり意識しないままにそれも書き入れていたらしい。

震える手で開いた箱の中には、一枚の写真と一緒に金色の鎖がついた何かが入っていた。
真紅の瞳を持つ黒猫を抱いたなまえが、写真の中から笑いかけている。

「これは……」

涼やかな音をさせて滑る金色の鎖。
小さな砂時計が嵌めこまれたそれは、古い逆転時計だった。

無理矢理魔法で押し込められていた記憶の数々が奔流のように蘇る。

全てを思い出したなまえは、両手で口元を押さえて喉の奥からせりあがって来る叫びを必死に堪えた。
その傍らにいつもいたはずの黒猫はもういない。


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