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喩えるならば、百本もの真っ赤に焼けた灼熱の刃に襲われたような痛みだった。
無数の刃によって容赦なく切り裂かれ、抉られるかの如きそれに、全身の骨が燃え上がり、白熱した激痛が駆け巡る。

悲鳴こそ噛み殺せたものの、膝は崩れ落ち、冷たい石床に這いつくばって床に爪を立てると、ルシウスは全身をぶるぶると震わせて苦悶した。
なめらかなプラチナブロンドが乱れて顔に振りかかる。
そうしてどれほど堪えただろうか。
不意に苦痛が止んだ。

「──ルシウス」

面白がっているような響きを持つ声が暗闇の向こうから響く。
ルシウスは跪いた姿勢のまま、ゆっくりと顔を上げた。
もともと色の白い顔から完全に色が消え去っている。

「お前を赦そう、我が友よ。あの日記がどれほど重要な物であるか、お前が知らなかったのも無理はない。この俺様以外には、真の価値を知り得た者は誰もいなかったのだからな」

「…有難うございます、我が君……」

ルシウスは恭しく頭を垂れて感謝した。

「この失態は、必ず……」

「勿論、必ず償って貰う。だが、まだその時ではない──今暫くは、せいぜい優雅な生活を楽しむがいい。いずれお前には重要な役目を任せる事になる」

シュウシュウと音をさせて大蛇が主の足元の床をゆっくりと移動していく。
分厚いカーテンが揺れる気配とともに、ヴォルデモート卿もまた姿を消していた。

ルシウスの喉元から長い溜め息がせり上がって来て、石床へと落ちた。
二度の失態は赦されないだろう。
何しろ、ルシウスはそれと知らずに主人の一部を破壊させる手伝いをしたようなものなのだ。
『リドルの日記』を分霊箱と知らずに安易に持ち出した上に、ハリー・ポッターに破壊されるのを許してしまった罪は重い。
磔の呪文だけで怒りが解けたのが不思議なほどだった。


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