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「父さま…!」

地下室の天井から下がるカーテンの影から全てを目撃していたクロリスは、完全にルシウス以外に誰もいなくなったのを確認してから父親のもとへと駆け寄った。

「クロリス!!何故ここに…?」

「ごめんなさい…でも、父さまが心配で…」

驚いて身を起こしたルシウスに抱きつき、クロリスは啜り泣く。
こんな酷い目に遭わされるなんて知らなかった。
父親が魔法で拷問されるのを目にしたクロリスは、カーテンの影から飛び出そうとしたが、今の今まで黒猫のリドルによって止められていたのだ。

「今、お前が出ていけば、ルシウスは更に窮地に追い込まれることになる」

そう言われて。
しかし、あの闇の帝王がクロリスに気付かなかったはずがない。
恐らくは、クロリスが覗き見しているのを知っていて、娘の前で父親をいたぶったのだろう。
そうすることで、ヴォルデモートはルシウスとクロリスという二人の人間の苦痛を同時に楽しんだのだ。
自分の知るリドルとはあまりに違うその残酷さに、クロリスはルシウスにぎゅうっと縋りついて子供のように泣き続けた。

「さあ、もう泣かないいで……私は大丈夫だよ」

ルシウスはまだ少し痺れの残る腕でクロリスの髪を優しく撫で梳かし、微笑を浮かべてみせた。
実際、愛しい少女の温もりを感じることで拷問によって痛めつけられた心身が癒されていくような気がしていた。

「本当に…? 本当に、もう大丈夫?」

クロリスが顔を上げる。
睫毛に涙の雫がついてふるふると儚げに揺れている様を見て、ルシウスは思わずそれに唇を寄せていた。
瞳から溢れそうになっている涙を唇で掬い、何度も濡れた目許にキスを落とす。
クロリスが目を閉じると、ルシウスはそのまま今度はクロリスの唇に自らの唇を重ねた。
父さま…、と弱々しく呟いたその口中へと舌を滑り入れて、愛撫するように口腔を舐め上げる。
次第に深くなっていく口付けに、クロリスは震える手でルシウスにしがみつき、必死で応えようとした。
まるで、溺れて縋りついてくる人間を救おうとするかのように。
憐憫でなく、そこには確かな愛情が存在していた。


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