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雲一つ無い青空が晴れ渡り、穏やかな風の吹く午後。
そんな絶好のクディッチ日和に事件は起きた。

「スリザリン、リードです。これで100対20になりました!!」

ワーッと言う歓声と、それを上回るブーイングが巻き起こる。
今日はスリザリンとレイブンクローのクディッチの試合の日。
グリフィンドールを始め、殆どの生徒達はスリザリンが負ける事を願っていたが、その期待を裏切って試合はスリザリン優勢に進んでいた。
その一番の功労者は、ルシウス・マルフォイだ。
彼は抜群の指揮でチームをまとめ、的確なプレイで点を重ねていった。
その優雅でありながら颯爽としたプレイに、うっとりと見とれている女生徒も少なくない。

その頃、クロリスは深緑色のクディッチローブをはためかせて眼下を風のように飛んで行くルシウスを見下ろし、注意深く視線を辺りに走らせていた。
スリザリンのシーカーとして、相手チームよりも早くスニッチを見つける事。
それがクロリスの役目だった。

またドッと歓声が上がる。
レイブンクローのチェイサーの横をすり抜け様に投げたクアッフルが、見事にゴールに入ったのだ。
銀髪をなびかせたルシウスがクロリスを見上げ、微笑む。
心配いらないよと言うように。
その微笑に、クロリスは甘く胸がうずくのを感じた。

「私がいるから大丈夫だよ。君は安心して見ていればいい」

クロリスをシーカーに据えた時に言った、ルシウスの言葉を思い出す。
シーカーがスニッチを捕まえられるかどうかで、戦局は大きく左右される。
だが、そんなプレッシャーを感じる必要は無いのだと、彼はクロリスを励ましてくれたのだった。
いつもそうだ。
ルシウスはクロリスを大切に思い、甘やかしてくれる。
だが、いつまでもそんなルシウスの優しさに甘えてばかりではいけない。

帚の柄をギュッと握りしめると、クロリスはスニッチを探す事に神経を集中した。
少しでも、ルシウスの役に立ちたかった。

「ああーっ、惜しい!レイブンクロー、後少しでゴールと言うところで、ゴイル選手の打ち返したブラッジャーに阻まれてしまいました。クアッフルは再びルシウス選手の元へ」

興奮した口調の実況が続く。
抜けるような青空から、競技場に立ち並ぶ観客席へと目を移した時、クロリスは観客席の端を掠めて飛ぶ黄金の光に気が付いた。
──スニッチだ!
ぐっと上半身を倒して帚の高度を下げ、スニッチ目がけて矢のように飛び出す。
クロリスが動いたのに気付いたレイブンクローのシーカーも、慌てて滑降を開始する。

「クロリス!」

だが、クロリスが青いローブのチェイサーの横を抜けた途端、ルシウスの切羽詰まったような声が響いた。
バーン!と物凄い音がして、クロリスの直ぐ側の観客席の足場が、爆発が起こったように破裂する。
レイブンクローのビーターが打ったブラッジャーが激突したのだ。
飛び散る木の破片に巻き込まれて悲鳴を上げるクロリスの体を、誰かが覆い被さるようにして庇う。


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