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突然の豪雨だった。
空を叩き割らんばかりの大音声が辺りに響き渡り、稲光が不気味なフラッシュのように何度も瞬く。
今頃、ホグズミードのメインストリートは大騒ぎになっているだろう。
慌てて店に飛び込んで雨を避けたり、ホグワーツへ逃げ帰ったりと、右往左往する生徒達の姿が目に見えるようだ。

試験明けの最初のホグズミード週末ということで、今日はかなりの生徒達がホグズミードへとやって来ていたが、クロリスもその中の一人である。
たまたま叫びの屋敷の近くまで来ていた事もあり、クロリスは一緒にいたルシウスとともに、雨に追われるようにして屋敷内へと逃げ込んでいたのだった。
幽霊屋敷と恐れられる、薄暗い家屋の中へと

屋敷内は荒れていたものの、室内のそこここで奇妙な生活感が感じられた。
まるで、時折誰かがやって来ては、一夜ほど屋敷で過ごして帰って行っているのではないかと思うほどに。

「おいで、クロリス。ここに座って暖まるといい」

ルシウスは手際よく暖炉に火を起こすと、ずぶ濡れになったクロリスを手招いた。
素直に歩み寄ったクロリスを暖炉の前に座らせ、濡れて垂れかかる白金の髪を掻き上げながらぐるりと辺りを見回す。
ふとひと巻きの毛布を見つけると、ルシウスはそれを広げて使える事を確認した。
眉根が不快そうに寄せられたものの、クロリスに風邪をひかせるよりはましだと判断したのか、ぱたぱたと手で埃を払う。
そうしてクロリスへと向き直ったルシウスは、おもむろに口を開いた。

「ローブを脱ぎなさい」

「えっ!?」

びっくりしたクロリスがルシウスを見上げると、ルシウス自身も既に着ていたローブを脱ごうとしているところだった。
清潔な白いシャツが均整のとれた引き締まった体に張り付いていて、胸板がくっきりと浮かび上がっている。

「に、兄さま…?」

「そのままでは風邪をひく。服を脱いで乾かさなければいけないからね」

優しく言って、ルシウスはシャツも脱ぎ去った。
濡れたそれを、近くのクロゼットから出して来たハンガーに掛けて吊るす。
男らしい上半身を目にしたクロリスは真っ赤になってルシウスから目を逸らした。
確かに、濡れたままでは体温は下がっていく一方だろう。
しかし……

ローブを握ったまま固まってしまっているクロリスを見て、ルシウスはちょっと笑った。

「大丈夫だよ。私は後ろを向いているから。その間に脱いでしまいなさい」

「う…うん…」

細かく震える指先が白くなっているのを見て、クロリスは決意を固めた。
ルシウスが背を向けているのを確認してから、おずおずとローブを脱ぐ。
幸い下着までは濡れていなかったので、ほっとする。
その肩に後ろから毛布が掛けられた。
そのまま毛布で体をくるまれて振り返ると、ルシウスに背後から抱きしめられた。


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