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二人分だけ用意されていたグラスに、金色がかった薄い液体を注いでいく。

「では、乾杯しようか」

グラスを差し出すルシウスに、はにかんだ微笑みを返して、クロリスはそれを受け取った。

生まれてからずっと側にいる人。

だが、こうしてルシウスと二人でクリスマスを過ごすのは初めての事だった。
マルフォイ家でも世間の家庭と同じく、クリスマスは家族で過ごすのが当たり前となっていたからだ。
他の家と違う点と言えば、毎年親戚一同が会したクリスマスパーティが開かれる事ぐらいである。
純血を重んじる家系ゆえに、招待客は全て純血の魔法使いばかりだったが、クロリスの側にはいつもルシウスがいてくれたし、それを不満に思う理由もない。
それが今年に限って、いつものようにクリスマス当日のマルフォイ家のパーティに参加する為にイヴの前日に訪れたクロリスを待っていたのは、遠方へ行く用意のされた高級車と、「今日は私と別荘で過ごそう」と言うルシウスの言葉だった。
まるで拉致されるような唐突さと強引さで連れて来られたのが、雪深い森の奥にあるこの別荘だ。

「美味しい!」

一口チキンを食べて、クロリスは顔を輝かせた。
気のせいか、いつもパーティで食べているよりも美味しく感じる。
人目を気にする事なく、遠慮なくルシウスに甘えられるこの状況のせいかもしれない。
先ほどまでの緊張はどこかに消え、寛いだ様子で食事をするクロリスに、ルシウスも嬉しそうに微笑んでいる。

「そうだな。味も申し分ないし、二人きりのディナーにはふさわしい料理だ」

「もう!さっきからそんな事ばかり言ってからかうんだから…」

「からかうなどとは心外だな。あまりの嬉しさにはしゃいでいるだけだよ」

肩を震わせて笑っていても説得力がない。
戸惑ったり怒ってみせる様子が可愛くて、ついからかってしまうのだが、そんな事とは知らないクロリスは、ルシウスの意地悪に振り回されているようで納得いかなかった。

「でも、どうして今年は二人で別荘に来たの?」

オードブルをたいらげ、メインも終わってケーキに入った頃、クロリスはずっと気になっていた疑問をぶつけてみた。
ソファの背にクロリスを抱き寄せるようにして腕をかけていたルシウスが、謎かけでもするかのように微笑む。

「さあ…何故だと思う?」

「どうして?」

無邪気に問い直すクロリスに、顔を近付ける。

「君を独占したかったからだ、クロリス」

そのまま緩やかに胸に抱き寄せられ、クロリスは頬を染めて美しい顔を見上げた。


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