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白い花びらのような雪が、昏い空からはらはらと舞い降りてくる。
目の前にかざしてみた手に触れた途端、儚いそれは溶けて消えてしまった。
防寒の魔法を掛けている為、降り積もった雪の上にほぼ全裸のまま寝そべっていても寒くはない。
本来ならば凍えるほどの冷気なのだろうが、リドルの掛けた魔法は完璧で、素肌に落ちて来ては溶けていく雪もまったく冷たく感じなかった。

「冷たくない雪って、なんだか変な感じ…」

仰向けの姿勢から、ころんとうつ伏せになってみても、やはり体の下にある雪の冷たさは感じられない。
まるで柔らかく受け止める白い真綿のようだ。
なまえはじわじわと体温で溶けていく雪に頬を寄せた。

「お前が雪の中で抱かれたいと言ったんだろう」

呆れたようなリドルの声が背中にかかる。
声はそのまま吐息となって、肩甲骨から項へと滑っていった。
一瞬、チリッと焼けつくような感覚が走ったのは、また新しい所有印を刻まれたのだろう。

「あっ、スズラン」

雪のシーツにうつ伏せに寝ていたなまえが、大きな木の根元を見ながら声を上げる。

「スズラン?」

背に覆い被さるようにして、雪の白さとなまえの肌のすべらかさを堪能していたリドルは、物憂げになまえの視線を追った。
木の根を隠すほどに積もった雪の合間に、小さな白い鈴のような花が顔を覗かせている。
なまえが花に乗った雪を指先で弾いて落としてやると、雪と同じ色をした可憐な花はふるふると揺れた。

「ああ…それはスノードロップだ」

「スノードロップ?」

振り返ったなまえは、きょとんとした顔で恋人を見上げた。
リドルの烏の翼のように黒い髪とルビーのような紅い瞳が、白い世界に確かな存在感を持って浮かび上がっている。

「スズランじゃないの?じゃあ、スズランの仲間?」

「見かけは似ているが、正確には仲間じゃない。鈴蘭はユリ科、スノードロップは彼岸花科だからな。種類が違う」

振り返ったなまえをそのまま転がして仰向けにすると、リドルは白い花となまえを見比べた。
少しうつ向いているようにも見えるその花の可憐さに、少女に通じるものを感じたから。

「?」

思わず笑みを浮かべたリドルに不思議そうに首を傾げるなまえは、雪の中に咲く小さな花とどことなく似ていて。
あまりの愛しさに顔を寄せてキスを落とす。


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