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「おはよう、なまえ。寝不足かい?」

「あ…うん、まあ…そんなところかな…」

翌朝の朝食の時間。
談話室に降りていくと、そこには既にアブラクサスの姿があった。
今朝も優雅な雰囲気の彼に、心配されるほどそんなにひどい顔をしているのだろうかと恥ずかしくなって、曖昧に頷く。
もしそうだとしたら全部リドルのせいだ。

「もし授業で眠ってしまっても、ノートを見せてあげるから心配いらないよ」

そう笑ったアブラクサスの後ろから、リドルが階段を上がってくるのが見えた。
同じく睡眠不足のはずなのに、まったくそうは見えない。
それどころか、朝の挨拶をしてくる下級生に笑顔で挨拶を返してやったりしている。
いっそ嫌味なくらいのハンサムぶりに、なんだか無性に腹が立った。

「ひどい顔だな」

「…誰のせいだと思ってるの」

「文句を言える元気があるなら心配はいらないだろう」

余裕たっぷりにふんと笑って、リドルはなまえの頬を指で優しく撫でた。

「僕も昨夜は、のぼせて動けなくなった誰かを担いで寮まで戻ったせいで疲れている。優しくして欲しかったら大人しくしていろ」

「だから!誰のせいだと思ってるの!」

「わかった、わかった」

よしよしと頭を撫でて大広間へ移動するよう促すリドルと、ふるふる怒りで震えながらも、結局は甘えたように彼に従うなまえを見て、アブラクサスはやれやれと肩を竦めた。

それから数日間、監督生専用のバスルームでは、何故かふてくされて海に潜ったままの人魚が、姿を見せない日々が続いたという。


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