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「広くて気持ちいいね」

「そうか」

虹色の泡が立ちのぼる湯は、温度もちょうどいい。
うっかり眠ってしまいそうな心地よさに浸ろうとしたなまえだったが、ぬるりとした感触に気付いて驚いた。
リドルの手が、石鹸を塗りつけるようにして肌を這い回っている。

「ななななに?何するの…!?」

「何をしに来たと思っていたんだ?」

リドルが呆れような声で言う。
初めからそのつもりだったのか。なんて男だ!分かってたけど!
なまえはやり場のない怒りに震えた。
その間にも、手は淫らに動き続ける。

「あ…いやっ、待って…!」

湯の中でぐいと脚を押し開かれ、慌ててリドルを押しのけようとしたが、逆に腕を掴まれて、リドルの膝の上に後ろ向きに抱っこされるかたちに身体を引き上げられてしまった。

「少し声を抑えろ。外に聞こえるぞ。ここは音が響くからな」

意地の悪い笑顔で囁かれ、急いで両手で口を塞ぐ。
目の前ではあの人魚が唖然とした様子でこちらを凝視していた。

「だ…だめ、見てる…」

「見せつけてやればいい」

ぶるりと震えたなまえの身体を抱え込んだまま、リドルが、ぞっとするほど優しい笑顔で囁く。
彼は顎を掬い上げて振り向かせたなまえに深く口付けて、それ以上の文句を封じ込めてしまった。
泡で隠されてはいるものの、ぱしゃん、ぱしゃん、と断続的に鳴る水音が、水面下で起こっている出来事を雄弁に物語っている。
憤慨した人魚は、とうとう耐えられずに絵の中の海へと飛び込んだ。


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