革製の立派な箱を二つ重ねて頭に乗せてヒョコヒョコと歩いてきたホキーが、主人のもとへとやってくる。 「さあ、トム、ご覧になって。きっと気に入るはずよ」 ヘプジバは自分と同じく老いた屋敷しもべ妖精から箱を受け取ると、リドルに向かってうふふと笑いかけた。 「貴方にこれを見せたと他の親族が知ったら……ええ、そうよ、あの人達も喉から手が出るほどこれを欲しがっているんだから!」 ヘプジバが蓋を開ける。 箱の中には、見事な細工の施された取っ手のついた、小さな金色のカップが収められていた。 ヘルガ・ハッフルパフのカップだ。 「穴熊──すると、これは…?」 ヘプジバに促されてそれを取り出したリドルは、獲物を見つけた肉食獣のように瞳を輝せかながら呟いた。 「そう、ヘルガ・ハッフルパフの物よ。よくご存知ね! なんて賢い人!」 なまえは俯いたまま、ヘプジバがリドルを誉め讃えるのを聞いていた。 媚びを含んだ甘ったるい声が鼓膜を揺さぶる。 続いてもう一つの箱から現れたロケットを目にした瞬間、リドルの双眸が赤く光ったように見えたのは、たぶん気のせいではない。 この時点で、すでに、ヘプジバは知らぬ内に自らの死刑執行証書にサインをしたようなものだった。 そしてその瞬間、なまえの運命もまた決まってしまっていたのだ。 すべてはリドルの思惑通りに。 |