そして、一月後。 夏の終わりを迎えたホグワーツの城門をくぐり、透明な馬に引かれた馬車が停まる。 休暇を終えて次々と城へ入って行く生徒達の波の向こう。 大木に背を凭れ、腕を組みながらこちらを見ている姿を見つけた途端、なまえはもうどうにも我慢出来なくなってしまった。 「トム!」 彼の名を呼びながら全速力で走り出すと、驚いて振り返る生徒達も目に入らず、広げられた腕の中に飛び込んだ。 黒いローブの胸元に縋りついて、なまえは堪えていた寂しさを吐き出すようにして思いきり泣いた。 わんわん泣いた。 「夏期休暇で離れている間、そんなに寂しかったのか?」 からかうような笑い声に夢中で頷く。 「では、もう離れたくない?」 ローブで涙と鼻を吹きながら頷く。 リドルはちょっと眉をひそめたが、後で魔法で綺麗にすれば良いかと、また笑顔になった。 「何があっても?」 髪を撫でられて、うっとりしながら頷く。 「永遠に?」 反射的に頷くと、両頬を手で包み込まれて顔を上げさせられた。 微笑を浮かべたリドルに微笑み返そうとして、ふと顔が強張る。 その瞳の奥に宿る光を見た途端、何故か、取り返しのつかない事を言ってしまったような気がしたからだ。 巧妙に仕掛けられた罠にはまってしまったような、そんな不安が湧き起こる。 リドルはそんななまえを見て、とびっきり優しく微笑んでみせた。 「そうだ…それでいい。お前は永遠に僕のモノだ、なまえ」 彼がなまえを深く愛しているのは間違いない。 …そのやり方はともかくとして。 |