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ドアを開けたリドルは、一瞬驚いたような顔をしたが、直ぐに微笑んで体を引いた。
その隙間から、なまえは黙って部屋へと入る。

「なるほど…随分と可愛らしい贈り物だ」

ちゃんと首にリボンを巻いてきているのを見て、リドルの唇が綻ぶ。
こうして笑顔だけ見ると天使のようだが、中身は悪魔そのものだと言う事を、なまえは嫌と言うほど知っていた。
指先でリボンの端をつまむと、リドルはそれを引っ張ってなまえを引き寄せた。
急に吐息がかかるほど間近に迫った端正な顔に、心臓が気持ちを裏切ってドキドキと高鳴り始める。

「あ、あのっ──」

「何だ?」

冷たい手に頬を包まれて、今更ながらに後悔が押し寄せてきた。
男の手。
どんなに整っていてしなやかに見えても、こうして触れてみると、やはり男性の手なのだ。
その固さに、自分のものとは違う体温に、どうしようもなく頬が熱くなる。

「泣くな」

知らずに滲んでいた涙を、リドルの指先が拭う。
それはびっくりするくらい優しい感触だった。

「泣くほど怖いなら、意地を張るな、馬鹿が」

「怖くなんか…っ」

そう言う声が震えている事に気付いた途端、どれほど自分が緊張していたのかを思い知らされた。
男女の関係になる事についての知識ならあった。
同室の友人とそんな話もしたし、いつかはそういう事もあるのだと漠然と考えてもいた。
だが、自分の言い出した半ば意地から出たような言葉で、『初めて』を経験するのかと思うと、やはり恐怖を感じていたのだ。
後頭部を撫でられ、そのまま肩口に頭をもたせかけるような形で抱き寄せられる。

「わかっている。最初からからかって帰すつもりだったから、安心しろ」

いつも、そうだ。
散々意地悪をしておいて、最後には優しくされるから、離れられない。
本当は優しいから、嫌いになれない。
──大好きなのだ。
なまえは、ぎゅうっとリドルに抱きついた。
しっかりして抱きしめ甲斐のある質量のある男の体に、安堵すると同時に、胸に切ないような痛みを感じて苦しくなる。
なまえの好きな大きな冷たい手が、ゆっくりと繰り返し髪を撫でている。

「……好き……」

思わず零れた言葉に、リドルが笑う気配を感じた。

「知っている」

こう言う時は、「僕もだ」とか答えるものじゃないのかとも思うが、そんなところも実に彼らしい。
否定しないのは、受け入れられている証拠だと感じ、なまえは肩に額を押しあてたまま安堵の溜め息を漏らした。

「なまえ」

そっと顔を上げると、宝石のように綺麗な瞳がこちらを見下ろしているのが見えた。
ハンサムと評される、端正な顔が微笑んでいる。
息をするように自然に、顔が引き寄せられて、唇が重なった。
甘い、甘い口付けは、想像していたよりも、もっと蕩けるような甘美さに満ちていて、目眩がしそうになる。
唇が離れると、なまえはリドルのローブの袖を握ったまま、小さく呟いた。

「…もう、怖くないから……プレゼント、受け取って…」

リボンがゆっくりとほどかれた。


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