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久しぶりにバジルが日本に遊びに来た。
家光から休暇を貰ったらしい。

奈々がちびっこ達を連れて出掛けている為、家の中は静かだ。
なまえがお茶を持って居間に入っていくと、バジルはテーブルの前にきちんと正座してテレビを見ていた。

「バジル君、なに見てるの?」

「親方様からお借りした資料用DVDです」

「資料用…どう見てもアニメにしか見えないけど……」

「はい。『バジリスク』というアニメのDVDです。忍者同士の闘いを描いたものということで、参考にするよう親方様に渡されました。この他にも、時代劇も教材にして勉強しているのですが、大変勉強になりますよ」

「……お父さん……」

なまえは軽い目眩を感じた。
盥と洗濯板で洗濯させたり、褌を与えたりと、どうも家光は自分の愛弟子に古式ゆかしい日本の知識ばかりを与えているらしく、バジルは完全にそれを信じこんでしまっているようだった。

「しかし、日本のアニメは凄いですね。ジャパニメーションと呼ばれるだけあって、完成度がまるで違います」

「うん…まあ、バジル君が楽しく観れてるならそれでいいか…──あ、はい、お茶」

「有難うございます、なまえさん」

バジルは恭しい手つきで湯飲みを受け取った。
それにしても、姿勢のよさも勿論だが、なまえでさえ足が痺れてしまいそうなのに、苦もなく長時間正座出来るのは凄い。
素直に感心していると、バジルがこちらに向き直って真剣な顔でなまえを見つめた。

「あの…」

「ん?」

「拙者の女房になりなされ!」

「!!??」

動揺のあまり、持っていたお盆をぽとりと取り落としてしまったなまえを見て、バジルのほうがもっと動揺した様子で赤くなる。

「す、すみませんっ、あの、じょ…冗談です!これはアニメに出てくるある忍者の台詞なんですが…あの、親方様が『これは日本における理想のプロポーズの台詞だから、俺の娘で反応を試してみろ』と言われて…や、やっぱり嫌でした、よね、すみません…軽はずみな真似を……なまえさんにとても失礼な真似をしてしまいました」

項垂れるバジルに、なまえは慌てて笑顔で手を振った。

「う、ううん、大丈夫!嫌とかじゃなくて、驚いただけだから…」

「そ…そうですか…」

「うん…」

「…本当に、嫌ではありませんでしたか?」

「う、うん。びっくりしただけ」

「良かった…いや、良くないですよね。すみません」

なまえも赤くなって俯く。
なんだろう、のたうち回りたくなるようなこの恥ずかしさは。



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