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人目を惹く容貌という意味では、ルッスーリアは間違いなくそれに当てはまる人物だった。

美醜の問題ではない。
巨漢でないけれど、ボクサー系の体格の良いカラフルモヒカンとくれば、見るなというほうが無理だろう。

ただ、ここはそれなりに高級なレストランで、客も店員も好奇心を剥き出しにしてジロジロ眺めるような下品な人間ではなかったから、一度彼を見た後は、皆お行儀よく視線を逸らして興味がないふりをしてくれた。

「お誕生日おめでとう」

「ありがとう」

もう誕生日を無邪気に喜ぶ年齢ではなかったが、それでもやはり親しい友人から祝われるのは嬉しいものだ。
小指を立ててグラスを軽く掲げたルッスーリアになまえは微笑み返した。

コースの最初の皿が運ばれてくる。

「さ、食べましょ。ここの料理は最高なのよ」

「ええ」

なまえはフォークを取った。

前菜を上品に食べるルッスーリアは、何だか奇妙な魅力がある。
獰猛な肉食獣がおしとやかに葉っぱを食べているみたいな感じだ。

「そうそう、この前話してたカレ、今度こっちに出張で来るみたい」

「ええと、笹川了平だっけ?ルッスーリアがコレクションに入れそびれた人」

「そうよ。ああ〜ん、今思い返しても悔しいわ!」

ルッスーリアが切なげに身をよじる。
叶わぬ恋に身悶える女のような仕草だ。

ルッスーリアとなまえの共通点。
それは死体への興味だった。
なまえはボンゴレファミリーの中の検死や検屍を担当する部署に勤めているのだ。
ルッスーリアのように死体に性的な興奮を覚えるわけではなく、純粋に職業として興味が尽きない対象だと思っている。

ルッスーリアのコレクションとなった男達を見た事もあった。

特殊な加工を施すことで完璧な状態のまま保存してある彼のコレクションは、まともな神経の持ち主であれば怖気ををふるわずにはいられない代物だ。
しかし、自身も曲がりなりにもマフィアの構成員であり、日常的に死体に接しているなまえにはそれほど奇異なものには感じられなかった。

世の中には頭のネジが緩んだ人間がごまんといるが、ネジが何本か完全に吹っ飛んでしまった人間もいるというだけの事である。
そしてこの闇の世界ではそんな人間は珍しくも何ともない。
たぶんそこで仕事をしている自身もどこか歪んだ人間なのだろうとなまえは冷静に分析していた。

「白雪姫みたい」とコレクションの感想を述べたなまえに、ルッスーリアは目を見張った(ように見えたのだが、実際はサングラスに隠れていたので分からない)後、朗らかに笑ったものだ。

「そんな事を言ったのは貴女が初めてよ」

彼はそう言った。
貴女のような子は大好きだと。



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