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獄寺隼人はマンションで独り暮らしをしている。
是非とも彼の家に押し掛けて手料理を食べさせたい、いや私を食べて!、むしろ獄寺君を食べたい!、と思っている女子は恐らく山ほどいるだろう。

しかし、残念ながら彼はそんな女の子達には見向きもしない。
師である不良校医などは、そんな獄寺の性的嗜好を心配しているぐらいである。

とは言え、獄寺は別に女に興味がないわけではない。
ただ、今の彼にとっては右腕として綱吉の力になることだけがすべてであり、色恋にかまけている暇はないというきわめてストイックな理由から、近づいてくる女達を邪険にしているだけなのだった。

そんな獄寺のマンションに、今日初めて女性が訪れた。

獄寺の両手には、スーパーのビニール袋。
その後ろをついて上がっていく少女の手にも、ピクニックバッグに似た鞄が握られていた。

「散らかってますが…どうぞ、なまえさん」

「お邪魔します」

ジーンズのベルトにチェーンで繋げた鍵を使って玄関のドアを開けた獄寺がなまえを中に通す。
散らかっていると彼は言ったが、男の独り暮らしにしては片付いているほうだった。
爆薬入りの箱が積まれているのを除けば、小綺麗に片付いた部屋である。

「すみません、こんな物しかなくて」

「ううん、どうも有難う」

買ってきた食料を冷蔵庫にしまい、ガラス製のテーブルの前に座ったなまえに獄寺は申し訳なさそうな顔で缶珈琲を差し出した。
そうして自分も彼女の正面に片膝をついて座る。

「じゃあ、レシピから始める?」

「はい。お願いします」

律義にノートと鉛筆を取り出した獄寺を見て、なまえは微笑んだ。



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